本記事は、茂木健一郎氏の著書『脳は若返る』(リベラル社)の中から一部を抜粋・編集しています。

脳,腸
(画像=valiantsin/stock.adobe.com)

脳腸相関のうちょうそうかん」を意識した食事を習慣化しよう

近年、ストレスを語るうえで触れておきたいこと。それは、脳と腸の関係性についてです。

普段、物事を考えたり、感情のコントロールなどをする脳。

普段、食べたものを消化吸収してくれる腸。

脳と腸という一見すると関係がないように思われる臓器同士が密接にかかわりあっていることが、最近の脳科学の研究で明らかになってきたのです。

皆さんは、「脳腸相関」という言葉をご存じでしょうか。

脳腸相関とは、脳が受けた影響が腸に何かしらの影響をもたらし、その逆である腸が受けた影響が脳に何かしらの影響をもたらす現象のことです。

例えば、緊張しすぎてお腹が痛くなった。こんな経験をしたことはありませんか。これも緊張というストレスを感じた脳が腸へ信号を送っているのが原因だと考えられています。

この脳腸相関には、腸内に住みつくおよそ1,000種類の「腸内細菌」が大きく関与していることがわかってきました。つまり、脳と腸、さらに腸内細菌の3つが相関関係にある、という考え方が浸透してきています。

ここで大事なのは、腸内細菌にはストレスを抑える働きを持っていることです。腸にはおよそ1,000種類のさまざまな腸内細菌が住んでおり、そうした群集を「腸内細菌叢そう」といい、「腸内フローラ」とも呼ばれています。この腸内フローラのほうが皆さんにはなじみがあるかもしれませんね。

腸内フローラを整えることは私たちの健康維持に欠かせないのですが、腸内フローラを整えるには善玉菌を含む食品と善玉菌の餌となる食品を同時に摂ることが理想的だといわれています。

日本の食文化は近年、洋食化が進んで肉類中心の食生活が好まれるようになり、動物性たんぱく質や脂質など悪玉菌(身体に悪い働きをする腸内細菌)の好む食事に変わり、腸内フローラを良い状態に保つことが難しくなっています。このように腸内環境が悪化すれば、もちろんストレス耐性が低下してしまう要因になるので注意が必要です。

そこで、善玉菌(身体にいい働きをする腸内細菌)を含む食事を意識的に取り入れることを習慣化してみてください。

善玉菌が含まれる食材としては納豆やヨーグルト、チーズなどの発酵食品、みそや醤油などの調味料を積極的に摂ってみてください。発酵食品には乳酸菌、ビフィズス菌、酪酸菌といった代表的な善玉菌が含まれており、腸内フローラを改善する働きがあるからです。

そしてもうひとつ。善玉菌を増やすには善玉菌が好む餌となる栄養素を摂ることがポイントになってきます。

善玉菌の餌となる栄養素は食物繊維とオリゴ糖で、どちらも腸内で善玉菌を増やす助けになります。食物繊維を多く含む食品としては、アボカド、ごぼう・にんじん・ブロッコリー)、いも類、きのこ類、海藻類などです。

オリゴ糖を多く含むのは、たまねぎ、にんにく、アスパラガス、カリフラワー、バナナ、大豆などの豆類などを積極的に摂ってみてください。

このように、毎日の食事を心がけることで腸内環境が整えられ、それは脳へ伝わりストレス耐性の高い脳を手に入れることができるというわけです。

脳は若返る
茂木健一郎
1962年東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。脳科学者。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職はソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。専門は脳科学、認知科学。主な著書に『ストレスフリーな脳になる! 茂木式ごきげん脳活ルーティン』(学研プラス)、『緊張を味方につける脳科学』(河出書房新社)、『脳がめざめる「教養」』(日本実業出版社)など多数。

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