本記事は、茂木健一郎氏の著書『脳は若返る』(リベラル社)の中から一部を抜粋・編集しています。

ドーパミン
(画像=JEGAS RA/stock.adobe.com)

ドーパミンが、何歳の脳であっても成長させてくれる

「茂木さんは、いつもエネルギッシュですね!」

これは、私と日頃一緒に仕事をしている人たちからよくいわれることです。

私自身、何か特別なことをしているわけではないのですが、ここで私の日常的な1日の活動をご紹介しておきます。

朝起きて、最初にやるのはツイッターのトレンドワードをチェックすることです。ツイッター上で今、話題になっているニュースがすぐにわかるからです。トレンドを確認するのは、一般のニュースでは出てこない若い世代の情報を効率よく収集するためです。

その後、近くのコンビニまで歩いておこなって目を覚まします。なぜ、私が起きたらすぐにコンビニまで行くのかというと、戸外の太陽の光を浴びるためです。これには科学的根拠があります。朝、太陽の光を浴びると、網膜から光が入り、視神経が刺激を受ける。その刺激が脳内の視床下部ししょうかぶ視交叉上核しこうさじょうかくに伝わります。それによって、脳の覚醒かくせいを促すホルモンであるセロトニンが放出され、朝になると目が覚めて、夜になると眠くなるという生体リズムが整えられていくからです。

コンビニから帰ってきて取りかかるのが、朝の連続ツイートの執筆です。自分のツイッター上に、今気になっていることを連続でツイートしてあげていくというものです。

それが終わるとメールをチェックして、次に朝食を食べながら新聞を読み、そしてランニングをした後にシャワーを浴び、本格的な仕事に入っていきます。

日によってやることが違いますが、実験のデータ解析や論文の読み込み、必要に応じて数件の打ち合わせや取材対応、移動中のタクシーでは雑誌の原稿を書きあげたり、読まなければいけない本を読み込んだり。そのほかにも、テレビやラジオの収録をしたりしています。

夜は情報交換を兼ねて、さまざまな業界で活躍している方たちとの会食といったような1日を過ごしています。

ありがたくも、日々忙しく仕事に向き合っているおかげで、達成感と心地よい疲労を感じながらベッドに横たわります。

自分でいうのも恥ずかしいのですが、もし私がほかの人から見ればエネルギッシュだとするならば、それは毎日、脳に程よい負荷をかけながら何かを達成しているからにほかなりません。

皆さんも、学生時代を思い出してみてください。一所懸命考えて問題が解けたり、課題を解決できたりしたときの感覚を。「わかった!」「できた!」という喜びでいっぱいだったはずです。このとき、脳のなかでは「ドーパミン」という物質が分泌されています。ドーパミンとは快感を生み出す脳内物質の1つで、この分泌量が多いほど大きな喜びを得ることができるのです。

すると脳は、このときの喜びが忘れられず、ことあるごとにその快感を再現しようとします。そして、もっと効率的にドーパミンを分泌するため、脳内では神経細胞がつながりあって新しい神経回路が生まれます。つまり、脳が活性化して成長するのです。

そして、快感を生み出す行動がクセになり、再び新しい問題に挑戦するようになります。このサイクルを「脳の強化学習」といいます。これを繰り返すことにより、思考の老化を防ぎ、いつまでも若々しい脳を保つことができるのです。

私自身、この脳の強化学習によって、10年、20年前よりもさまざまなスキルが上がっているなと感じているくらいです。私は普段から、脳には無限の可能性があると強調しています。言い換えれば、何歳になっても脳は成長することができるということです。

脳は若返る
茂木健一郎
1962年東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。脳科学者。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職はソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。専門は脳科学、認知科学。主な著書に『ストレスフリーな脳になる! 茂木式ごきげん脳活ルーティン』(学研プラス)、『緊張を味方につける脳科学』(河出書房新社)、『脳がめざめる「教養」』(日本実業出版社)など多数。

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