本記事は、野口敏氏の著書『2度目の会話が続きません』(サンクチュアリ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
話がなかなか進みません
「大丈夫、待つよ」というサインを送る
先を急ぐと困惑してしまう
Kさんは、趣味の音楽で集まったメンバーのなかにいるYさんと、2度目の会話中です。
Y 「昨日の休みはどうしていたの?」
K 「えっと……出かけていました」
こんな感じで、口数が少ない人は、最初は話の中身があまり見えないようなことを言います。
質問に対して単語が短い言葉で答え、結果だけを伝えるのでエピソードになっていないことが多いのです。
ここでせっかちな人は、「出かけていましたって、どこへ!?」などと先を急ぎ、いらだちを見せがち。
それがおとなしい人を余計に困惑させ、無口にさせてしまいます。
では、どうしたらいいのでしょうか?
話はスローな展開で進める
「出かけていました」と短く言われたら、笑顔で「あ!お出かけしてたのね」と、ここは気持ちのあるオウム返しで応じてあげるのがいちばんです。
その後、「間」を長めに取ってください。
間を取ると言っても、ただ黙っているのではなく、その間もアイコンタクトを送り、穏やかに「大丈夫だよ」「ゆっくりね」という気持ちを伝えます。
このスローなペースが、彼らにはとてもありがたいのです。
自分の話に自信がないタイプも、話すことが浮かんでこないタイプも、どちらもこの共感とスローな展開で心が落ちつきます。
この人との会話は、急がなくてもいいんだ」という安心感を与えて、新しいイメージを引き出してくれるのです。
こういう会話ができるあなたに、相手はとても居心地のいいものを感じるでしょう。
会話がとぎれることを恐れる人は多いのですが、気持ちが伝わり合っている限り会話がとぎれることはありません。
おとなしい人が持っている不安とうまく付き合って、穏やかで安心感のある雰囲気をつくれば、やがて会話の車輪は少しずつ回りはじめるのです。
POINT
気持ちの入ったオウム返しをして、相手の言葉を待つ
心を開いてほしいです
リアクションは、長く、大きく、多めで
共感の反応は、通常よりもさらに増やす
おとなしくて無口に感じるKさん。ようやく話をはじめてくれて、
K「昨日は休みだったので、会社の資料づくりに必要な本を買いに出かけていました」
と言ってくれました。これを受けてOさんは、つい「どうして休みの日に!」と、強い言葉で反応してしまいました。
すると、ようやく話しはじめたKさんの口は、また閉じられてしまいました。
それを横で聞いていたTさん。Kさんを気の毒に思い、助け舟を出してくれました。
T 「Kさん、休みの日でも仕事のことを考えているんですね
K 「いえ、今度小さな企画を初めて任されまして、それで……」
この言葉に、Tさんはこんなリアクションを取ります。
T 「おお! ……それは大事ですね!」
K 「でも、本当に小さな企画なんです」
Tさんは「おお!」と長めの反応をしたあと、すぐに言葉を使わずに、少し間をおいて「それは大事ですね!」と言っています。
このように、おとなしい人と話すときの共感(リアクション)は、長く、大きく、多めにというのが極意です。
反応する→間をおく→共感の言葉をもうひとつ送る
このゆっくりとしたペースが大事で、思いやりあふれる対応を前にして、Kさんは「受け入れてもらっている」という安心感に包まれます。
するとおとなしかったKさんにも、話すイメージが徐々にわいてくるのです。
反応は何度でも
さらにTさんは、話を前に進めずに、もうひと言こんな言葉を送りました。
T 「Kさん、丁寧に仕事しそうですもの」
K 「いえ、仕事が遅いだけです」
これが「反応は何度でも」ということ。せっかちさんはいきなり「どんな企画?」と話を先に進めがちなもの。
しかし、相手の心がまだ開かれていない状態では、いい話は出てきません。
KさんはTさんの対応に、謙遜しながらも頬を赤く染めて、うれしそうでした。
POINT
心が開かれることで言葉数は増えてくる
1989年に男性にコミュニケーションを教える花婿講座を日本で最初に開講。マスコミから200社以上取材を受けるも、「男が結婚のために勉強するなど情けない」と世の中から猛バッシングを受け、時代を先駆ける者の苦難を経験。以後、テーマをコミュニケーション全般に転じ、コミュニケーションスクールTALK&トークを主宰したが、苦労が20年間続く。
この間、研究と経験を地道に積み重ね、それを基に2009年『誰とでも15分以上 会話がとぎれない! 話し方66のルール』(すばる舎)を発刊。シリーズ120万部を突破。以後、著書は18冊を数える。
現在も大阪、東京、リモートでコミュニケーション講座を開催。「習ったその日にうまくなる」をテーマに、雑談力、スピーチ力、説明力UPの講座を開き、全国から生徒が絶えない。
公式YouTubeチャンネルでは定期的にライブ放送を開いている。※画像をクリックするとAmazonに飛びます