本記事は、児玉光雄氏の著書『頭が良くなる!「両利き」のすすめ』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

頭脳,子供
(画像=denisismagilov/stock.adobe.com)

「両利き人間」に変身すれば人生に奇跡が起こる

現代の脳科学研究は最先端の計測機器の目覚ましい発達により、脳のどの領域が働いているかについて特定できるようになりました。けれど、相変わらず大脳新皮質の右側と左側の交信や連係については神秘のベールに包まれたままです。

しかし、さまざまな角度から考察した私の主張は以下のとおりです。

脳の活性化を促進したければ、強い片手利きのままで人生を終えるのではなく、日常生活の中で両手使いの習慣を身につけること。

私のこの発想のエッセンスは、右脳と左脳を個別に鍛えるという従来の取り組み方ではなく、右脳と左脳の接続ケーブルである脳梁に着目したことにあります。なぜなら接続ケーブルの役割を果たす神経の束の使用頻度により脳機能は大きく影響されると思うからです。

その典型例をご紹介しましょう。それは記憶力です。物事を記憶するとき、片方の大脳半球を駆使するよりも、両側の大脳半球を動員したほうが鮮明に記憶できるし、その保持時間も圧倒的に長いのです。

例えば、幼児に「犬」という言葉を記憶させるには、左脳に「犬」という単語を記憶させるよりも、右脳と連動させて犬の写真を見せればより鮮明に記憶できます。

つまり、右脳あるいは左脳単独よりも、明らかに左右の脳のコミュニケーションを図りながらのほうが記憶する効率が高まるのです。

脳梁を鍛えることこそが、右脳と左脳を適宜に切り替える「転脳」のトレーニングの肝、ということになります。

私のこの考えを裏付ける主張をしている学者も少数ながら存在します。

アメリカの認知・神経心理学者であるクリス・ニーバウアー博士は強い片手利きと両手使いとの思考パターンの違いについての研究結果から、「強い片手利きよりも両手使いの人のほうが、考え方を改める頻度が高い」と結論付けています。

ご存じのように、左脳は理屈の脳であり、右脳は常識を破る脳です。つまり左脳人間は「思い込んだらそのことにこだわる頑固者」の傾向があり、一方、右脳人間は「断片的かつ辻褄の合わないことに無頓着」という両極端の性質を持っています。

片利きの人間はどちらかの極端に走る傾向があるのですが、両利きの人はバランス良く思考できる、両脳使い特有の能力を保有できる可能性を秘めているのです。

利き手が決まるのはいつ頃からか?

以上のことから、私は、幼児期にはぜひ両手使いを推奨したいのです。なぜなら歴史上の天才たちの多くが両手使いだったからです。彼らは自由自在に両手を使いこなす習慣を身につけていました。

ダ・ヴィンチやアインシュタインは両方の大脳半球を駆使する習慣を身につけていたから凄い発想を出力することができた、と私は思うのです。

マーガレット・クラーク博士は、「子どもというものは最初の一年間は少なくとも両手を区別なく使用している」と主張しています。

「左右の好みが出るのは、周囲から教えられるか、あるいは周囲に合わせてしまうからです。両手利きの子ども、もっと正確に表現すれば、利き手の好みをもたない子どもは急速に右手利きになります。それは真似たり、親から訓練を受けたり、日用品に右手用の性質があることが原因なのです」

(『右きき世界と左きき人間』マイケル・バーズリー著 TBS教育事業本部刊より)

有能な外科医は両手使いでなければなりません。メスをはじめとするさまざまな道具を巧みに両手で持ちながら、同時に異なる動作を左右の手にさせているからです。

あるいは、一流のヴァイオリニストは左手と右手が完璧に異なる動きをすることで、見事な音色を出すのです。

私自身30年以上前から両手使いを意識しながら生活しています。例えばゴルフやテニスは左利きですが、箸とエンピツは右手で扱います。これは幼稚園に入学した5歳のときに、母親が箸とエンピツを右手で扱うように矯正したためです。当然のことながら、絵を描くのも、消しゴムで消すのも、あるいは歯ブラシや櫛を扱うのも、私は左手で行います。

実は、私の家族は父親が左利き、母親は右利きでした。私と弟の2人兄弟はどちらも左利きです。つまり、片親だけが左利きでも100%子どもが左利きになることも珍しくないのです。

一方、私の妻は右利きです。彼女の両親や兄も右利きです。私には3人の子どもがいますが、2人の娘は右利きですが、息子だけは左利きです。

私たち夫婦は息子にたいしてまったく矯正をしませんでした。その結果、私の息子は私とまったく正反対の手を使うようになったのです。例えば、彼は箸とエンピツは自然に左で扱い、大人になってもそれを変えていません。しかし、テニスやゴルフは右利きでプレーするのです。

ここに、親子における利き手の関係に関するデータがあります。例えば、マクマナスという学者は、数十年の調査や研究の結果を通して以下のような結論に達したと言います。

両親とも右利きの場合、左利きの子どもが生まれる確率は、9.5%。どちらかの一方が左利きの場合、19.55%。そして両親とも左利きの場合、26.1%が左利きになる。

やや古いデータですが、子どもの発達と利き手の変異について、A・ゲゼル博士とL・B・エイムズ博士が行った研究結果の要約を図表2-5に示します。

頭が良くなる!「両利き」のすすめ
(画像=頭が良くなる!「両利き」のすすめ)

この研究を信じれば、28週で利き手の優位性が変わることや、52~56週でどちらかの優位性が決定され、それから何度か左右の変異が行われ、4~8歳で最終的に片方の手の優位性が決定されるのです。

それはともかく、意識的に両手を使うことにより、脳内の活性化は驚くほど促進されることを覚えておいてほしいと思います。

実際の仕事においても、与えられた時間内にどれほど頻繁にキャッチボールするかが試されるのです。右脳だけ、あるいは左脳だけで思考する習慣を身につけてしまうと、このキャッチボールの機会が失われ、脳のネットワークが錆び付いてひらめきやアイデアが生まれにくくなります。それだけでなく、偏った考えに取り憑かれる傾向が強くなり、明らかに独創性が失われるのです。

左脳オンリーでは平凡なアイデアの羅列に終始します。しかし、右脳オンリーでも奇抜だが、実際には使えないアイデアしか生まれてこない可能性がとても高いのです。

頭が良くなる!「両利き」のすすめ
児玉光雄
1947年兵庫県生まれ。追手門学院大学スポーツ研究センター特別顧問、元鹿屋体育大学教授。京都大学工学部卒。大学時代はテニスプレーヤーとして活躍し、全日本選手権にも出場。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院で工学修士号を取得。
米国五輪委員会スポーツ科学部門本部の客員研究員として、米国五輪選手のデータ分析に従事。過去30年以上にわたり、臨床スポーツ心理学者として、ゴルフ、テニスを中心に数多くのアスリートのメンタルカウンセラーを務める。
また、右脳活性プログラムのカリスマ・トレーナーとして、これまで数多くの受験雑誌や大手学習塾に右脳活性トレーニングを提供。この分野の関連書は100冊以上、累計発行部数は150万部を超える。
主な著書はベストセラーになった『この一言が人生を変えるイチロー思考』(三笠書房)をはじめ、『勉強の技術』(SBクリエイティブ)、『大谷翔平 勇気をくれるメッセージ80』(三笠書房)、『脳力向上! 大人のパズル』(成美堂出版)、『能力開発の専門家が作ったそうぞう力とさんすう力がみるみる育つこども脳トレドリル』(アスコム)など200冊以上。日本スポーツ心理学会会員、日本体育学会会員。

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