本記事は、児玉光雄氏の著書『頭が良くなる!「両利き」のすすめ』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

右脳,左脳
(画像=יהודית פנסו/stock.adobe.com)

右脳と左脳を連動させれば脳は劇的に活性化する

これからは「全脳思考」ができる人間の時代です。実は誰でも多かれ少なかれ、全脳思考をしています。ところが、多くの書籍において、さも右脳単独あるいは左脳単独で作業がなされるような表現が多いのが実状です。

このことに関して、八田武志博士はこう疑問を投げかけます。

「現在の学校教育のゆがみ自体を否定するものではないが、現在学校で教えている数学や国語などの教科が左脳にだけ依存しているというような言い方は適切ではない(中略)左脳と右脳のそれぞれが得意とする働きが相互に作用し、共同して一つの教科学習は成立すると考えるのが必要であろう」

(『伸びる育つ子どもの脳』労働経済社)

要は、右脳と左脳の得意な作業を適材適所で駆使することにより、学習が加速されると八田博士は言いたいわけです。それを実現するためには、右脳と左脳の交信を活発にして脳梁を鍛えることにより、大脳半球全体を働かせることが大切なのです。

いわゆる全脳思考を私が強調するのは、その点にあるのです。同じ腕前の侍が闘うとき、一刀流と二刀流のどちらが有利か。見事に2つの刀を使い分ける侍のほうが明らかに有利だと感じるのは私だけでしょうか?

私自身も中学生のとき、右手でエンピツを持ち、左手で消しゴムを持って両手を器用に使いながら先生の板書を筆記する作業を行っていました。ところが、私自身にとっては至極当たり前のこの作業も、右利きの友達にとってはとても不思議に見えたそうです。

私からすると右利きが行っている作業の多くが、非効率的に思えたのです。例えば、右手のエンピツを置いて、消しゴムに持ち替えて文字を消し、再びエンピツを持ち直して筆記作業を再開する。これは私にとっては、とてももどかしい作業に思えました。

あなたの普段使っている利き側だけで作業するのではなく、意識的に非利き側を活用してください。そういう習慣をつけることにより、あなたの脳は劇的に活性化するのです。もちろん、全脳思考をしている場合でも、自分はどちらのサイドの大脳半球を使っているかを意識しておく必要があります。

ここであなたが右脳型人間か、左脳型人間かをチェックしてみましょう。図表3-1の問いに素直な気持ちで「はい」か「いいえ」で答えてください。普段の日常生活習慣により、あなたがどちらのタイプであるかがわかるのです。

頭が良くなる!「両利き」のすすめ
(画像=頭が良くなる!「両利き」のすすめ)

あなたの利き脳がわかれば、非利き脳の領域を活性化させる生活習慣を意識して行うことで、つまり、「いいえ」と答えた設問に対して「はい」のほうの日常習慣に変えていくことで、普段使っていなかった非利き脳領域が鍛えられます。

利き脳領域の活性度はそのまま維持しながら、非利き脳領域を活性化することにより、あなたの脳のパフォーマンスは明らかにレベルアップし、仕事や趣味において驚くほど成果を上げることができるのです。

実際には、私たちは無意識に1日のうちに何度も脳の切り替えを行っていますが、それは右脳型行動と左脳型行動を理解して意識的に切り替えることとはまったく違っています。

つまり、自分の行動がどちらの半球の脳を活性化するかを意識しながら日常生活を送ることで、いままでよりもパワーアップさせることができるのです。

図表3-2に左脳型行動と右脳型行動の代表例を示します。気に入った行動を日常生活に組み込んでください。頻繁に左右の脳の活性領域を変化させることで、集中力が高まるだけでなく、脳の両半球をバランス良く働かせることで、片方の脳を酷使せずにすみます。その結果ストレスも大幅に軽減できるのです。

頭が良くなる!「両利き」のすすめ
(画像=頭が良くなる!「両利き」のすすめ)

あなたの利き脳をチェックしてみよう

あなたの利き脳を知ることが人生を実りあるものに変えてくれます。手や足は片方のサイドだけ使えば事足りることが多いのですが、脳はそのニーズに応じて両方の大脳半球を共働させる能力を保有しています。この能力を活用しない手はありません。

もちろん、あなたの利き脳を変える必要はありません。もっと言えば、利き脳を変えることは成人になってしまうと、ほとんど不可能です。だから、不得意なサイドの脳を積極的に鍛えることにより、2つの半球を結んでいる脳梁の活性化が促進され、脳全体の機能が驚くほど高まるのです。

使い慣れていないほうの手を使うぎこちなさを楽しむように、いままで使い慣れていないほうの脳を積極的に使うことを楽しみましょう。あなたはきっと、いままで体験したことのない感覚を発見するはずです。

同時に脳梁の活性化が図られることにより、スポーツや芸術において全脳を動員した行動パターンが可能になり、より大きな成果を上げることができるようになります。それだけでなく、右脳型の人々は従来右脳単独で行っていた行為の一部を左脳に分担させることにより、もっと偉大な仕事ができるようになるのです。

言い換えると、これまでは右脳だけで行っていた雑用を左脳に分担させさることにより、本来右脳がやるべき、あるいは右脳でなければできない作業に専念できるということなのです。

さらに、両脳使いになることにより、ストレス解消の達人にもなれるのです。

片一方の大脳半球だけを酷使するからストレスが生まれ、それが結果的に私たちの心理状態を悪化させて深刻な場合は「うつ状態」に陥らせます。

誰でも両方の大脳半球を使うほうが片方の大脳半球だけを使うよりも効率がよいことは理解できるでしょう。しかし、残念ながら脳内の様子は脳波計やPET(陽電子放射断層撮影装置)がなければ知ることができません。そこが利き手や利き足と利き脳の決定的な違いなのです。

前にも少し触れましたが、多くの作業は両手でなければできないのです。利き足の例を挙げれば、サッカーでは蹴る足ばかりがスポットライトを浴びていますが、反対の足は何もしていないわけではありません。

キックする足がボールから受ける力を、反対の足がしっかりと接地して受け止めています。このように利き手や利き足が単独で行っている作業を見つけることのほうが難しいのです。

手や足と同じように、いままでやったことのなかった、あるいは使われていなかった脳領域を積極的に使うことにより脳の活性化が図られるのです。

頭が良くなる!「両利き」のすすめ
児玉光雄
1947年兵庫県生まれ。追手門学院大学スポーツ研究センター特別顧問、元鹿屋体育大学教授。京都大学工学部卒。大学時代はテニスプレーヤーとして活躍し、全日本選手権にも出場。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院で工学修士号を取得。
米国五輪委員会スポーツ科学部門本部の客員研究員として、米国五輪選手のデータ分析に従事。過去30年以上にわたり、臨床スポーツ心理学者として、ゴルフ、テニスを中心に数多くのアスリートのメンタルカウンセラーを務める。
また、右脳活性プログラムのカリスマ・トレーナーとして、これまで数多くの受験雑誌や大手学習塾に右脳活性トレーニングを提供。この分野の関連書は100冊以上、累計発行部数は150万部を超える。
主な著書はベストセラーになった『この一言が人生を変えるイチロー思考』(三笠書房)をはじめ、『勉強の技術』(SBクリエイティブ)、『大谷翔平 勇気をくれるメッセージ80』(三笠書房)、『脳力向上! 大人のパズル』(成美堂出版)、『能力開発の専門家が作ったそうぞう力とさんすう力がみるみる育つこども脳トレドリル』(アスコム)など200冊以上。日本スポーツ心理学会会員、日本体育学会会員。

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