本記事は、児玉光雄氏の著書『頭が良くなる!「両利き」のすすめ』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

こども,天才
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天才児には左利きが多い

米アイオワ大学のデータで、天才児には左利きが多いということが報告されています。図表6-1にそれを示します。SATという大学入試のための学力試験で飛び切りの好成績を示した12~13歳の英才児を「強い左利き」「弱い左利き」「両手利き」の3つの群に分けています。比較群は平均的な成績の学生です。この表から、比較群に対して「強い左利き」の英才児の比率がとても高いことがわかります。

頭が良くなる!「両利き」のすすめ
(画像=頭が良くなる!「両利き」のすすめ)

また別の調査では、被験者を知能指数132以上の天才児とそれ以下の普通の児童に分けて左利きの比率を調べました。その結果、ちょっと意外な結果が得られたのです。

天才児には左利きの比率が高かったというのが1つの特徴。もう1つの特徴は、普通の子どもの中では知能指数の低い子どもたちに左利きが多かったのです。

つまり、左利きの子どもは知能指数の高いグループと知能指数の低いグループの両方に高確率で出現することが判明したのです。

個々の才能と左利きの比率に関する子どものデータも存在します。米ハーバード大学の調査で、数学を得意とする中学生と、国語を得意とする中学生を対象にした結果、数学の試験で1,000点満点で700点以上の成績優秀な学生の左利きの比率は約2割であり、国語を得意とする学生の約2倍だったのです。

また、大学の学部別のデータもあります。建築、美術、数学を専攻する学生の左利きの比率はそれ以外の学部の左利きよりも有意に高かったのです。

これらの事実と左利きがスポーツ選手に多い事実を重ね合わせると、左利きは空間認知能力が優れていると推測できます。もしもあなたのお子さんが左利きなら、空間認知の才能を要する職業に就くことを検討してみる必要があるのです。

両利きの天才であったアインシュタインやダ・ヴィンチは子ども時代、文字や数字で表現することが苦手だったというエピソードが多く残っています。アインシュタインは3歳になっても話ができず、両親は知的障害ではないかと心配したと言われていたくらいです。

また、ダ・ヴィンチは、15世紀のヨーロッパにおいて知識人の常識であったラテン語ができなかったと言われています。この2人の例だけから非右利きの人たちの特徴を類推するのは飛躍し過ぎかもしれませんが、概して非右利きの人たちに小説家や雄弁家が少ないことは明らかなようです。

2種類の思考回路を理解する

脳には、私たちが住んでいる場所に住所があるのと同じように、「脳番地」が存在します。脳研究に造詣の深い加藤俊徳医師が作成した脳番地を図表6-2に示します。

この脳番地は、120に区分されています。例えば、3番は感覚系、4番と6番は運動系、17番、18番、19番は視覚系、41番と42番は聴覚系、44番と45番は言語系の脳番地です。

そして、これは当たり前のことなのですが、運動が得意な子どもは運動系が、音楽が得意な子どもは聴覚系が、そしておしゃべりの上手な子どもは言語系が発達しているのです。

私たちは真っ白な脳の状態でこの世の中に生まれてきます。生まれてからの環境や行動パターンによって特定の脳番地が鍛えられ、結果的にその能力に秀でた子どもになります。

あるいは、脳の使い方によって記憶を鮮明に定着させることもできます。図表6-2には、「直線脳」と「迂回脳」のシステムも示しておきます。この2つのシステムがポイントです。

頭が良くなる!「両利き」のすすめ
(画像=頭が良くなる!「両利き」のすすめ)

これはあくまでも私の推測に過ぎませんが、利き手や利き足、あるいは得意なほうの大脳新皮質だけを使って日常生活を送っている人たちは、「直線脳」の持ち主である可能性が高いのです。

一方、利き側の身体だけでなく非利き側を積極的に使う習慣を身につけている人たちは「迂回脳」の持ち主である可能性が高いのです。つまり、できるだけ広範囲の脳の領域を使う習慣を身につければ「迂回脳」の持ち主になれるのです。

成績が芳しくない子どもは「直線脳」で、成績の良い子どもは「迂回脳」で物事を記憶します。例えば、問題を耳で聴いたとき、直線脳は記憶をたどって答えを組み立てて口にします。

一方、迂回脳は複雑な経路をたどります。問題を耳で聴いた後、五感と、さまざまな脳の箇所を総動員させて答えを出すのです。

たとえば、手を動かして図を描いたり、その図を眺めたり、複数の答えの候補を出して全体を統括してから最終的な答えを導き出したり……と、脳のさまざまな領域を総動員して答えを出します。

だから、両利きの子どもは片利きの子どもに比べて脳のより多くの領域を活性化しているため、脳の回路の柔軟性や多様性を可能にして、彼らの脳を「迂回脳」に仕立ててくれるのです。

確かに、迂回脳は無駄が多く、最短距離で処理する直線脳に比べて時間がかかりますが、直線脳では解けない難しい問題になると、迂回脳は途端に威力を発揮するのです。

たとえば、「レモン」という果物を記憶する場合、「レモン」という言葉だけを記憶するのが直線脳です。対して、レモンの実物や表面の感触、匂い、味覚を総動員させながら記憶するのが迂回脳です。この迂回脳の働きにより、レモンは強烈な記憶として脳に定着するのです。

このメカニズムは勉強にとどまらず、スポーツや芸術においても適用されます。普段からあなたのお子さんを両利き人間に育てることにより、ちょっと面倒な迂回脳のメカニズムを駆使することが可能になり、複雑かつ困難な課題にもスムーズに対応できるようになるのです。

頭が良くなる!「両利き」のすすめ
児玉光雄
1947年兵庫県生まれ。追手門学院大学スポーツ研究センター特別顧問、元鹿屋体育大学教授。京都大学工学部卒。大学時代はテニスプレーヤーとして活躍し、全日本選手権にも出場。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院で工学修士号を取得。
米国五輪委員会スポーツ科学部門本部の客員研究員として、米国五輪選手のデータ分析に従事。過去30年以上にわたり、臨床スポーツ心理学者として、ゴルフ、テニスを中心に数多くのアスリートのメンタルカウンセラーを務める。
また、右脳活性プログラムのカリスマ・トレーナーとして、これまで数多くの受験雑誌や大手学習塾に右脳活性トレーニングを提供。この分野の関連書は100冊以上、累計発行部数は150万部を超える。
主な著書はベストセラーになった『この一言が人生を変えるイチロー思考』(三笠書房)をはじめ、『勉強の技術』(SBクリエイティブ)、『大谷翔平 勇気をくれるメッセージ80』(三笠書房)、『脳力向上! 大人のパズル』(成美堂出版)、『能力開発の専門家が作ったそうぞう力とさんすう力がみるみる育つこども脳トレドリル』(アスコム)など200冊以上。日本スポーツ心理学会会員、日本体育学会会員。

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