念願の定年退職に至ったものの、いざ仕事から離れると自由な時間を持て余す人は少なくない。一方、平均寿命や健康寿命は長くなる傾向にある。長期化するリタイア後の期間の過ごし方は、特に退職を控えた50代~60代前半には大きな課題となることもしばしばだ。今回は退職後におすすめの趣味を紹介する。
人との交流、外出機会が極端に減る
そもそも、なぜ趣味が必要なのかを考えるため、まずは現役時代の生活を振り返ってみてほしい。
人により差異はあるだろうが、職場までは電車やバス、自動車で通勤し、良くも悪くも、その過程でさまざまな情報に触れる。職場に着くと、仮に営業マンなら業務で街を歩くし、多くの取引先と会話する。事務職であっても同僚と交流する機会はあり、やらなければならない仕事が手元にあって、多かれ少なかれ使命感をもって日中を過ごす。
つまり現役時代は、たとえ嫌だったとしても「他人と交流する機会」や、外出などで「体を動かす機会」が多いが、これらが退職を境に極端に減少する場合がある。自発的に何かをしなければ、朝起きてから夜寝るまでに、何らイベントごとがないからだ。
これら2つの機会がなくなると、健康を害したり、認知症になったりするリスクが高まると言われることもある。そこで、趣味を考える上では各自の資金余力の範囲内で、これら2つの機会をなるべく満たすものを考えてみたい。
旅行やスポーツで身体を動かす
2つの機会を充足させる行動というのは (1) 自分以外に相手がいて、 (2) 自宅以外が会場になること、だろう。
そこで、まず挙げたいのは「誰かと旅行に行くこと」だ。目的地はもちろん、道中ではこれまで見たことのない景色を見たり、初めての乗り物を利用したりして、大いに刺激を受けられる。もちろん、同伴者との会話も多いし、旅先で出会った人たちとの会話もある。
大和ネクスト銀行による2020年11月の調査では、新型コロナウイルスの感染拡大前に当たる2019年にシニア世代が旅行にかけた費用は、年間で約20万円だった。これは国内旅行なら年2、3回程度、海外旅行なら年1回程度に換算できる金額だ。
例えば65歳から80歳までの15年間、毎年20万円を支出すると、累計で300万円になる。総額では、少なくない金額となるので、退職後の自身の資金力を見ながら旅行の頻度やグレードを考えたいところだ。
身体を動かすという意味では「スポーツ」も挙げられる。
高齢者に馴染み深いスポーツとしてはグラウンドゴルフがある。インターネット通販では初心者向けのクラブなどのセットが1万円前後から販売されており、初期費用は小さい。日本全国にサークルがあり、入会金・年会費は合わせても数千円以内というのが相場で、ランニングコストも抑えやすいと言える。競技を通じた仲間づくりもできる。
若い頃に打ち込んでいたスポーツを再び始めるのも結構だろう。例えば、テニス。所属するテニスクラブの性質によって必要な費用には大きな差があり、年間数千円のクラブから数万円のクラブまである。もっとも、必ずしもクラブに入らなくてもよい。仲間内で公営コートの使用料金を折半すれば、費用は格段に安く済む。
頭の体操で認知症予防
これまで見た趣味のように身体を動かすわけではないが、実際に出掛けて仲間と交流する趣味に、囲碁や将棋、英会話がある。言うまでもなく、囲碁や将棋は脳を使うし、英会話は年配になってなお新しいことを学ぶという意味で、認知症の予防にもつながりそうだ。
このほか、各地の新聞社が経営している文化センターなどでも多彩な講座がある。陶芸やダンス、楽器などで、仲間を作りながら身体や指先を動かせる。
また、現役時代はなかなか手を出せなかった分野として、ボランティアに汗を流すのもよいと思われる。仕事から引退すると、社会とのつながりを実感しにくくなるというのは、よく言われるところ。例えば、最近は児童の登下校時間に合わせて横断歩道や交差点に立ち、事故に遭わないよう見守るボランティアがある。ときにリタイア後は生きがいを見つけにくいとも言われるが、雨の日も雪の日も道路に立ち、子どもや保護者たちから感謝される仕事は、そんな“生きがい”の悩みの打開にもつながることだろう。
63%の人がリタイア後の「ハッピーライフ」を期待する時代に
前述の大和ネクスト銀行による調査で、全国のシニア予備軍 (50歳~59歳) の男女336人に対し、60歳以降の生活がどのようなものになると思うかを尋ねたところ、63%が「ハッピーライフ」と答えたという。
さらに、シニア (60歳~79歳) の男女664人のうち、生活実感について「ハッピーライフ」と回答した比率は81%に上った。
健康寿命が長くなってアクティブに活動するシニアが増える中、リタイア後にこれまでできなかったことに積極的に取り組みたいという意欲の高さが垣間見える。人生100年時代を迎え、そもそも退職後を「リタイア後」「引退後」と捉えることが間違いであり、そこから新たな人生が始まるという認識でいるべきなのかも知れない。
(提供:大和ネクスト銀行)
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