欧州中央銀行の検査はまだ“過渡期”?市場のネガティブな反応

今まで欧州銀行が行ってきた検査に比べるとより厳格であるようだ。ところが、資家達はストレステストの審査結果に対して皮肉めいた反応を示した。結果発表後の27日の市場で、審査に合格した銀行も不合格の銀行も共に売り出されたのだ。つまり、市場は、ストレステストの合格が資本の万全性を保証したとはみていないと判断した。

投資家たちがこのようなネガティブな反応に出た背景には、今回の審査の精密さがまだ不十分であることに対する疑問がある。今回の査定に採用された『リスク加重法』には欠陥が有り、銀行の資産計上方法に一定の裁量が認められているという。それから、ユーロが深刻なデフレに陥る可能性が考慮されていないという問題も指摘されている。

今回の審査では3年間ストレスが掛かった場合の中核的自己資本比率を算出する際に、新銀行自己資本規制バーゼルIIIの”過渡的”基準が用いられているため、繰り延べ税額控除などの資本の除外を段階的に行えるとしているとしている。つまりバーゼルIIIの完全実施版ではなかった。もし完全実施版を適用すれば、今回不合格とされた銀行の数25行は、34行に増えるとも言われている。また、現在のユーロ圏ではデフレは現実味を帯びているにも関わらず、今回のストレステストではそのことの想定がされていない。

それでも今回のストレステストは、銀行に一層の厳格さを求め、信頼できる数字を投資家に示せたとして一定の評価も得ている。


ユーロを維持するために

以上の様に、ストレステストは投資家にとってはある程度の判断材料を示せたといえる。しかし、銀行の融資拡大を必ずしも後押しするものではなく、さらにストレステストだけで南欧の中小規模企業の信用収縮が終わるわけではない。また、ユーロ圏のデフレレが進行した場合、破綻する銀行が出てくるとも見られている。一方、資本強化を促進するために、貸し渋りや貸し剥がし傾向が強まれば、それはそれで景気が冷え込む原因ともなってしまう。

単一通貨ユーロを維持するためには、ECBはストレステストの継続だけでなく、預金保証基金の整備などのさらなる取り組みを行う必要があるだろう。

(ZUU online)

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