2025年問題、物価の上昇、コロナ禍で必ずしもモノが売れない時代の到来──。この数年で日本の中小企業を取り巻くさまざまな問題が浮き彫りになりつつある。利益を出せず、赤字倒産する地方企業は増える一方だ。また、後継者問題に直面し、第三者承継をせざるを得ないという会社も多い。
このような状況において、地方企業の衰退がそのまま地域経済の衰退にもつながっていると指摘するのは慶應義塾大学で産学連携等を支援するSFCフォーラム事務局長で、自ら投資ファンドのマネージャーを務める廣川克也氏だ。
果たして打開策はあるのだろうか。廣川氏によれば、中小企業の活性化を考える上でまず不可欠なのは、自社の「良さ」を言語化し、具現化していくことだ。価値を明確化すれば、よりブランディングやプロモーションに取り組みやすくなる。すると、人材確保や新規事業立ち上げにもつながり、ひいては地域経済にも恩恵をもたらすことになるという。
豊富な事例を紹介しつつ、地方企業の活力の源を探っていく。
自社の「良さ」を具現化する
山形県をはじめ北海道や新潟県、山梨県、宮崎県、神奈川県などで起業教育を担当させていただいている仕事上、多くの地方企業が衰退している現状を見てきた。衰退している背景には未曾有のパンデミックやロシアのウクライナ侵攻などの問題が複雑に絡み合っており、地方企業を元気づける単純明快なソリューションは存在しない。
その上で、困難な状況の中でも確実に一歩ずつ前へ進んでいくために、自社の強みや価値をしっかりと把握し、言語化することを企業オーナーのみなさまに意識してもらいたい。
「御社の金属加工技術は他にはない!」と顧客から言われて、なんとなく自社の良さを感じているということはあるだろう。しかし、それがどれだけ価値のある技術なのかを世間一般に伝えるために、言葉で具体的に表現できているだろうか?
いくら唯一無二の技術を持っていても、素晴らしいサービスを提供していても、それらの良さが具体化・言語化できていなければ、その価値は他人に認識されない。伝わらないし、広がらない。翻って、自社の価値が明確化され、言葉で具体的に表現できていればブランディングやプロモーションをしやすくなり、ビジネスチャンスは大きく広がっていく。