本記事は、伊藤智洋氏の著書『弱者でも勝ち続ける「株」投資術』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。

ローソク足グラフチャート
(画像=pookpiik/stock.adobe.com)

日経平均の1営業日の変動幅の大きさにどう対応するか?

では具体的にどのようなやり方が有効なのかについて触れていく前に、225先物の1日の変動幅の変化についてさらに詳しく見てみます。ここで知っていただきたいことを一言でいえば、最近の相場の動きは「年間の変動幅に匹敵するような動きを短期間でしてしまう」ということです。

つまり、時間をかけて収益を積み上げたものが、一瞬でひっくり返されてしまうということです。そうした特性の変化に対応するために、「長期の予測をしたうえで、保険としての短期のトレードも組み合わせる」というノウハウが必要となるわけですが、まずは短期間での変動幅が非常に大きくなっているということについて解説します。

なお、日経平均株価の1営業日の変動幅の計算は、「前日の終値から当日の高値、安値の値幅」で、前日の終値をスタート地点とし、夜間の動きを考慮しても、225先物の1 取引日* の変動幅のほうが大きくなる場合があります。

*先物の場合、「取引日」は「(前日)夜間立会~日中立会」、「営業日」は「日中立会~夜間立会」となります。先物のローソク足やデータとして「取引日」ベースのものを使用していますので、以下では先物にかかわる記述には「取引日」と表記しています。

225先物が夜間の時間帯に大きく動いて、日中が夜間に動いた範囲内で、夜間よりも小幅な値動きで推移すると、日経平均株価の1日の変動幅が225先物よりも小さくなってしまうことに留意してください。夜間の時間帯に大きく上下へ振れて“往って来い”となった場合、225先物にはあった夜間の動きが、日中の日経平均株価の動きには反映されないからです。

弱者でも勝ち続ける「株」投資術
(画像=弱者でも勝ち続ける「株」投資術)

図表3-1は、左側が日経225先物の1取引日の変動幅を示しています。

右側は、日経平均株価がその年の全体で動いた値幅と方向を示しています。

左側は、順番に1年間の取引日の日数、1取引日の高値から安値までの値幅の1年間の平均値、1取引日だけで、1,000円幅、500円幅、400円幅、300円幅の動きのあった日数(年間)です。

右側の陽線、陰線は、順番に大発会の始値から大納会の終値のほうが高い場合に「陽線」、低い場合に「陰線」とあらわしています。年間の変動幅は、その年の最高値から最安値を引いた値幅です。

日経平均株価の年間の変動幅は、おおまかに見て、値位置が1万5,000円以下の場合、だいたい2,000~3,000円幅となっていて、1万5,000円以上の場合、4,000~5,000円幅の値動きとなっています。

筆者が2015年2月に上梓した『株は1年に2回だけ売買する人がいちばん儲かる』という本で、「日経平均が上がりやすい時期、下がりやすい時期に年間の変動幅を取りに行く展開となっている」ので、「上がりやすい時期を前に押し目を買って、下がりやすい時期を前に戻りを売り、年間の変動幅を取りに行く」ことが有効だと書きました。

年間の変動幅を取りに行く仕掛けは、年間の変動幅の大部分を利益にすることを目的として、(日経平均採用銘柄の)現物株なら3か月から6か月程度、日経225先物や信用取引なら、1~3か月程度の取引期間、持株、建玉を維持することを想定したやり方です。

図表3-1を見ればわかるとおり、日経平均株価の場合、だいたい2,000円から4,000円の値幅の利益を得ることを目的とした取引になります。

2012年以前は、2008年を除けば、1営業日の平均変動幅が200円前後となっていて、2,000円幅の値動きを経過するためには、値動きがジグザグになることも考慮すると、1か月程度か、それ以上の日柄が必要でした。

以前は、2,000円幅の利益を想定して仕掛けると、早くても1か月の日柄が必要だったわけですから、1か月以上、持玉をじっくり維持する取引をしていれば十分だったわけです。

その後、日経平均株価の水準が上がるにつれて当然、1営業日の変動幅も大きくなっていますが、注目していただきたいのは直近の動きです。

2012年以前は、1営業日で400円幅の変動すらめずらしかったといえます。それが2013年以降は、400円幅の動きが頻繁にあらわれていて、1,000円幅の動きも目立つようになっています。

2017年よりも年間の変動幅の小さな2021年は、先物の1営業日の変動幅が2017年の倍の動きへと変わってしまっています。10日もあれば、かんたんに2,000円幅の上げ、下げを経過してしまう状況になってしまいました。せっかく目的とする利幅が乗ったにもかかわらず、もう少し上がるかもしれないと欲をかくと、2,000円幅の利益が1週間でなくなってしまってもおかしくない状況です。そのような相場の動きを肌身で実感している人も多いでしょう。

2022年には、3月15日の安値2万5,219円から3月25日の高値2 万8,338円まで、7日連続して、前日の終値を当日の終値が上回る動きがありました。実に7日で3,119円幅の上昇場面(1取引日の上げ幅の平均値が約446円)です。

また、2022年5月19日の安値2万6,150円から6月9日の高値2 万8,389円まで、15日で2,239円幅の上げ幅となった後、6月10日から6月14日までの3取引日の期間で2万6,357円(2,032円幅)まで下げるということもありました。3取引日で、15取引日分の上昇のほとんどを失ってしまったわけです。

弱者でも勝ち続ける「株」投資術
伊藤智洋(いとう・としひろ)
証券会社、商品先物調査会社のテクニカルアナリストを経て、1996年に投資情報サービス設立。株や商品先物への投資活動を通じて、相場予測の有効性についての記事を執筆。株探の「伊藤智洋が読む 日経平均株価・短期シナリオ」などで、株価、商品、為替の市況を解説するほか、シグマベイスキャピタルのeラーニング講座「テクニカル・ファンダメンタル コンビネーション分析コース」講師を担当。
『チャートの救急箱』(投資レーダー社)、『投資家のための予想&売買の仕方マニュアル』(同友館)、『株価チャートの実戦心理学』(東洋経済新報社)、『テクニカル指標の読み方・使い方』『株は1年に2回だけ売買する人がいちばん儲かる』『ローソク足チャート究極の読み方・使い方』(以上、日本実業出版社)など著書多数。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます
ZUU online library
(※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます)