小規模企業共済に加入するメリット

ここでは、小規模企業共済の加入メリットを紹介する。どのようなメリットがあるかを知り、加入検討や掛金額設定の参考にしてほしい。

退職金を準備できる

小規模企業共済には、満期や満額がなく「退職・廃業時に積立金(共済金)を受け取れる」というのが基本的な仕組みである。なぜなら一般的な会社員などのように退職金がなく、また社会保険や労働保険など各種制度の恩恵を受けることが少ない小規模企業の経営者や個人事業主のために、社会保障政策の不備を補充する機能を果たすことを目的としているからだ。

そのため、ただ廃業・退職時に退職金として共済金を受給できるだけでなく、受給した共済金は退職所得または公的年金等の雑所得扱いとなる。つまり課税対象にはなるが、税のかかり方は低く抑えられるのだ。

節税に役立つ

税制メリットについて観点をもう少し広げて説明していく。小規模企業共済は、掛金全額が「小規模企業共済等掛金控除」として確定申告時に所得から控除でき納付時の税制メリットも大きい。例えば月額掛金2万円を月払いしている場合、1年間の合計掛金額24万円を所得から控除できる。

仮に所得税率が20%だとすると所得税で約4万8,000円、住民税は約2万4,000円(住民税率10%)、合わせて約7万2,000円の節税につながるというわけだ。

事業資金の貸付けを受けられる

経済環境の変化や病気・ケガによる入院、自然災害による被災などで事業資金の工面が必要なときは、既払掛金の範囲内で低金利の貸付けを受けることもできる。事由によって複数の貸付制度が用意されているので知っておくといいだろう。

  • 一般貸付制度
  • 緊急経営安定貸付け
  • 傷病災害時貸付け
  • 福祉対応貸付け
  • 創業転業時・新規事業展開等貸付け
  • 事業承継貸付け
  • 廃業準備貸付け

このうち「一般貸付制度」を例に説明していく。借入可能額は10万円以上2,000万円以内(5万円単位)かつ掛金納付月数により掛金の7~9割の範囲内。借入利率は年1.5%(2023年5月現在)と低利だ。借入期間は借入額によって異なるが、100万円以下の借り入れなら6ヵ月または12ヵ月から選択できる。急いで資金が必要なときや少額資金を工面したいときなど利便性は高い。

小規模企業共済に加入するデメリット

次に小規模企業共済のデメリットを紹介する。加入する前に必ず確認して欲しい。

掛け捨て・元本割れリスクがある

小規模企業共済に加入したあと短期で継続不能となった場合、掛け捨てとなり払い込んだ掛金が戻ってこない場合がある。掛け捨てとなる期間は、継続不能となった事由によって異なる。例えば任意解約する場合、加入後12ヵ月未満だと掛け捨てとなるため注意したい。また加入後6ヵ月未満に契約者が死亡した場合は、本来共済金の支払事由に該当する。

しかし納付月数が6ヵ月未満の場合は、共済金が支払われない。なお任意解約にも注意しておこう。なぜなら任意解約の場合、掛け捨てとはならなくとも掛金納付月数が20年に満たなければ元本割れとなってしまうからだ。

加入資格がある

小規模企業共済は、小規模企業の経営者や個人事業主などのための制度であるが、加入資格が定められており誰でも加入できるわけではない。加入資格があるのは、次の要件に該当する人だけである。

  1. 農業、不動産業、製造業、建設業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)などを営む場合は、常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業主または会社等の役員
  2. 商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む場合は、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または会社等の役員
  3. 事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員、常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員
  4. 常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員
  5. 常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員
  6. 上記①と②に該当する個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)

ただ上記に該当する場合でも、例えば副業として事業を運営している会社員(給与所得者)や学業を本業とする全日制高校生など、加入不可とされる人もいるため、注意したい。また加入後、事業成長とともに従業員数が増えて資格要件から外れる場合もある。基本的にこの場合でも継続可能ではあるが、個人事業主として加入した場合には十分に注意しておこう。

なぜなら法人成りして法人役員(経営者など)となったり、従業員数オーバーとなったりする場合は解約扱いとなってしまうからだ。