本記事は、千原せいじ氏の著書『無神経の達人』(SBクリエイティブ)の中から一部を抜粋・編集しています。

会話
(画像=naka/stock.adobe.com)

いきなり「打ち解けた感じ」を出すテクニック

無神経に距離をつめるのが僕なりのコミュニケーションだから、割と知らない人にも気安く話しかけてしまいます。

少し前の話になりますが、後輩と吉本興業の劇場が入ってるビルの従業員用エレベーターに乗っていたら、同じビルにあるショップ店員さんと一緒になったことがありました。

大きな荷物を抱えていた彼を見て「棚卸しやろな」と思った僕は、そのまんま「兄ちゃん、棚卸しか?」と聞きました。別になんてことなく、ごく普通に。


彼「あ、そうなんです」
僕「やっぱりな。ほな、がんばってな」
彼「はい、ありがとうございます」

みたいな会話を交わして、彼は先にエレベーターを降りていきました。

ところが、この一部始終を見ていた後輩が、ひどく驚いていたんです。どうも後輩は、知らない人に気安く話しかけた僕のことを「すごい」と思ったらしいのですが、逆に僕は「は? なんで話しかけられないの?」と不思議でした。

そのショップ店員さんは、別に後ろ暗い商売をしているわけではありません。だから、なにをしているのかを聞かれても具合が悪いことはない。

万が一、彼がとても神経質だったりして、急に話しかけた僕を嫌いになったとしても、僕はなにも困りません。通りすがりに、ちょっと言葉を交わしただけの間柄だから、嫌いになられたことにすら気づかないでしょう。

これのどこに「話しかけられない理由」があるっていうの? 不思議でたまらなかったけど、こういう無神経さが、海外ロケでも生きているわけです。

海外ロケでは、現地の人にインタビューをします。せっかくならば上っ面ばかりの話じゃなくて、日本の人たちが聞いたこともないような、深い話やおもしろい話を聞きたい。

かといって、そこまで時間はかけられません。

そういうときこそ、例の気安さです。「打ち解けている感じ」を、いきなり前面に出す。すると、たいていは、知り合ったばかりでも旧知の仲みたいに相手が錯覚してくれて、短い時間でも思わぬ話が聞けたりする。

知らない人からいきなり話しかけられたら、警戒するのが人間ですが、そこを気にしても埒らちが明きません。だから、無神経にズカズカいくんです。日本人に対しても、海外の人に対しても、同じ。そのときに僕が心がけていることは、主に次の3つです。

(1)笑顔で話しかける。

無神経と言われる僕ですが、笑顔だけは意識してつくるようにしてます。まず相手の目に入るのは自分の顔だから、にこやかにしておくに越したことはない。こわばった顔や無表情な顔で話しかけられたら、誰だって構えちゃうでしょ。顔が与える第一印象が、その後のコミュニケーションを左右すると言ってもいい。

(2)相手がすぐ答えられることを聞く。

「なにしてんの?」など、どうでもいいような、簡単で、かつ相手がすぐに答えられる質問をして、どうでもいい会話をする。意味なんてなくていいし、盛り上げようなんて考えなくていい。そんな感じでなんとなく会話がつづくと、割と早く打ち解けられます。

(3)自分の都合は押し付けない。

まずは「打ち解けた感じ」を出すことが大事なので、警戒心を抱かせないためにも、「なにかを聞き出したい」「自分の得意分野について話したい」という欲は、あっても見せません。

僕の経験上、これだけ心がけていれば、グイグイいっても、まず嫌な顔をされることはありません。

無神経の達人
千原せいじ
芸人。1970年1月25日生まれ、京都府出身。1989年に弟である千原ジュニアとコンビ「千原兄弟」を結成。テレビ番組等の企画等でこれまでに70ヵ国以上を訪問し、卓越したコミュニケーション力が話題となる。2018年にメンタルケアカウンセラーの資格を取得。2021年、貧困・就学困難への支援や国際協力の推進等を主な事業とする一般社団法人ギブアウェイを設立、代表理事となる。著書に『がさつ力』(小学館)、『プロに訊いたら驚いた! ニッポンどうなん?』(ヨシモトブックス)がある。

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