本記事は、廣瀨涼氏の著書『あの新入社員はなぜ歓迎会に参加しないのか』(金融財政事情研究会)の中から一部を抜粋・編集しています。
フリーミアム ―― 21世紀の「無料」のビジネスモデル
「フリーミアム」とは、基本的なサービスや製品は無料で提供し、さらに高度な機能や特別な情報については料金を課金する仕組みのビジネスモデルのことである。
20世紀から、商品を無料で配ったり、ある商品を無料と称し呼び水として他の商品を売ったりするビジネスモデルは存在していた。「タダより高いものはない」という言葉があるように、無料で商品をもらった以上の対価を期待されるという意識は我々に深く根付いている。無料で商品をもらう「行為」の対価として結局お金を使うことになるのが20世紀の「無料」のビジネスモデルといえるだろう。
一方、21世紀の「無料」は、そのビジネスモデルの性質が異なる。2009年にクリス・アンダーソンの『フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略』(NHK出版)がベストセラーになったことを覚えている人もいるかもしれない。彼によると、主にデジタルコンテンツは無料であることを前提に、収益を生み出す仕掛けの必要があるという。
21世紀の「無料」は、そのサービスを無料で使用するユーザーである大勢の「フリーライダー」と、一部の課金ユーザーである「プレミアムユーザー」の2つの存在で成り立っている。
無料で最低限の機能を使えればよいと考えるフリーライダーと、課金することで得られる便益に対して価値を見出すプレミアムユーザーは、1つのサービス内で棲み分けされており、課金したいと思う消費者の存在によってそのサービスが継続しているといえる[図表3-5]。
また、従来の「無料」と同様に、フリーライダーはサービスを無料で利用する対価として、サービス利用時に広告視聴が強要されることも一般的である。
Z世代はこの21世紀の「無料」が物心ついたときには整っていた世代である。基本プレイ無料のスマホゲームは、その身近な例といえる。
また、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い普及した「Zoom」をはじめ、オンラインミーティングツールでは無料の基本サービスと、より充実した有料サービスを消費者は選ぶことができる。
Z世代は、そのようなフリーミアムな消費を行う機会が消費行動を始めたときから多く存在しており、「無料で消費することで満足できるモノならば、わざわざお金を払う必要がない」という価値観を持つ者も多い。
一方で、スマホゲームなどへの課金や、自分が推している人に対して「投げ銭」と呼ばれるインターネットを通じた送金を行うなど、サービスの拡充やコンテンツを支援するためには、自ら進んで支出を行うという価値観も定着している。