本記事は、青田努氏の著書『図解 「いいキャリア」の育て方 「5つの資」から考える人生戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の中から一部を抜粋・編集しています。
仕事に使える時間は限られている
加齢とともに失われてゆく時限的なリソース「資源」の ひとつに、「時間」があります。もしあなたがまだ独身で、健康で、親族の介護などがない状態であれば、仕事に使える時間は比較的多くあるのではないでしょうか。
しかし、結婚すればパートナーとの時間が増え、子どもが生まれれば家族との時間が増え、自身の体力が衰えてくれば療養や休息に必要な時間が増え、親族の介護が必要になれば仕事ばかりしてはいられなくなります。
このように、人生はいろいろな事情が積み重なっていくものであり、仕事に全力投球しようと思っても、それが許される時間は意外と限られています。「比較的自由が利く期間のうちに、いかに資本を身につけられるか」は、キャリアにおける重要なテーマとなります。
ただし、時間が限られているからといって、自分のキャパシティを無視してまで仕事にコミットすればいいというわけではありません。キャパオーバーしてしまうと、自分を自分らしく保てなくなります。
自分を自分らしく保って、パフォーマンスを発揮するためには、休息が必要です。
頑張りたい気持ちが高まっている状態では、予定が空いていると「何かしなきゃ」という思いから予定を詰め込んで安心したくなる気持ちもあるでしょうが、職場での経験や行動から学んだことを咀嚼するには「休む」必要があります。
「予定がないから休む」ではなく「休むという予定を入れる」、この考え方が大切になります。倒れてから休むのではなく、倒れる前に休みましょう。
キャパには4種類ある
キャパシティには、「(1)心のキャパ」「(2)体力のキャパ」「(3)能力のキャパ」「(4)時間のキャパ」の4種類があります。
そして、何よりも大切なことは「4種類のキャパシティの、ボトム(1番小さいもの)に合わせる」こと、これに尽きます。
基本的には、「(1)心 > (2)体力 > (3)能力 > (4)時間」の順に重視する必要があります。
まず1番大切なのは「(1)心のキャパ」です。これが溢れてしまうと、いろいろと大変なことになってしまいます。心がいっぱいいっぱいなときは、他のキャパに余裕があったとしても、心をしっかり休めることを最優先しましょう。
次に「(2)体力のキャパ」です。言うまでもなく、時間が空いているからといって体力的に無理が生じるような予定を入れてはいけません。
健康は、一度損ねてしまうと元に戻りづらいこともあります。休めば回復するようなレベルでやれているうちは良いのですが、度を超えると回復が長引くようになってしまいます。
また、心と体力に余裕があっても、「(3)能力のキャパ」を超えてしまうと処理が追いつきません。パフォーマンスが悪化してしまうだけです。
「ギリギリの挑戦の中でこそ人は成長できる」というのもある種の真理かもしれませんが、すべての人がエリートアスリート的な価値観で働くのは無理があります。アスリートにならなくても、人は幸せに生きられます。
勇気を持って仕事を断ったり、周囲の助けを借りたりして、自分だけでどうにかしないようにしましょう。これは慣れないうちは恥ずかしく、屈辱的に思うかもしれませんが、結果的には組織と自分自身にとって良い結果になることが多いように思えます。
したがって「(4)時間のキャパ」ギリギリまで予定を入れていいのは「(1)心、(2)体力、(3)能力に余裕があるときだけ」となります。自分のキャパシティの限界は、4種類のうち自分が1番弱いものになります。ここに合わせましょう。
もし(4)時間が空いていたとしても、(1)心 (2)体力 (3)能力のうちどれかが悲鳴を上げていたら、ちゃんと「休むという予定」を入れましょう。
もしあなたが「休む」ことに罪悪感や抵抗があるのであれば、「エネルギーチャージ」「セルフメンテナンス」「コンディション調整」といった言葉に置きかえてみることをおすすめします。
(4)時間の残りキャパは見えやすいですが、ほかの(1)心 (2)体力 (3)能力の残りキャパは見えづらいものです。だからこそ、自分の内面の声に耳をすませて、自分を大切にしてあげてください。
Twitter @AotaTsutomu
1999年筑波大学第一学群人文学類卒業。2014年早稲田大学大学院 商学研究科(MBA/人材・組織マネジメント系モジュール) 修了。2003年GCDF(米国CCE, Inc. 認定キャリアカウンセラー資格) 合格。
リクルートおよびリクルートメディアコミュニケーションズに通算10年在籍し「リクナビ」の学生向けプロモーション、求人広告の制作ディレクター、自社採用担当を務める。 その後、ドリコム、アマゾンジャパン、プライスウォーターハウスクーパースなどで人事マネージャー(主に中途採用領域)を経て、2015年より日本最大のHRネットワーク『日本の人事部』にて、人事・人材業界向け講座、人事の交流会・勉強会組織、HR Techメディアなどを立ち上げる。2017年にLINE入社。人材支援室副室長を務めたほか、マネジメント層の成長支援プロジェクトのリード、採用・タレントマネジメントなどさまざまなプロジェクトを推進。LINE在籍中の2021年にCast a spell合同会社を設立。
現在は250名の勉強会コミュニティ「採用を体系的に学ぶ会」、2900人の匿名相談コミュニティ「人事のへや」などを企画・運営しつつ、美大進学のため美術予備校「すいどーばた美術学院」に通学中。 著書に『採用に強い会社は何をしているか 〜52の事例から読み解く採用の原理原則』(ダイヤモンド社)がある。※画像をクリックするとAmazonに飛びます。