本記事は、青田努氏の著書『図解 「いいキャリア」の育て方 「5つの資」から考える人生戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の中から一部を抜粋・編集しています。
自分の得意なことを、どうやって見つけるか
限られた自分の資源を有効活用するためには、「自分自身の特性 =資質を理解しておくこと」が重要です。その中でもキャリアに 影響を与えやすいもののひとつとして、「得手不得手(得意なこ とと苦手なこと)」があります。好き嫌いは直感的・主観的・絶対的に判断しやすいものですが、得手不得手は相対的なものとなります。自分の得意なことに資源を使えたら、満足のいくキャリアになりやすいのではないでしょうか。
まず理解しておきたいのは、得手不得手は相対的な概念なので、比べる対象が必要だということです。「自分の中での比較」と「他人との比較」をすることで得手不得手についての理解が深まっていきます。
自分の中での比較は「この作業・業務は自分の中では比較的得意にやれる・苦手だと感じる」と理解していくことです。
これは好き嫌いと一致するとも限らず、さほど好きな作業ではないけど上手くやれたり、またその逆もあったりするので混同しないように気をつける必要があります(好きなことは得意だと思いたくなります)。
1人だけで考えてもわかりづらいときは、周囲の人からのフィードバックも参考にしながら見つけていってください。
また、他人との比較は「他の人はこの作業で苦労しているみたいだけど、自分はそこまで苦ではない」など、「他の人と比べると自分はこれができる・できない」と理解していくことです。
なお、上司や先輩・チームメンバーが的確なフィードバックをしてくれる環境であればいいのですが、そうでない場合もあるかと思います。
そのようなときは、少し距離が離れてしまいますが、「他部署で的確なフィードバックをしてくれそうな人」や、「信頼している他社の人」にメンター的な役割をお願いしてみるという方法もあります。
克服すべき弱みと、諦めていい弱みとの違いは?
得意なことがわかったらそれを発揮していけば良いですが、不得意なことはどう対処すれば良いでしょうか。
近年、「弱みに着目するのではなく、強みを伸ばすべき」という風潮が以前よりも強くなっています。
それでは本当に、弱みは克服しなくていいのでしょうか?
実は、弱みは「克服しなくていい弱み」と「克服すべき弱み」に分かれます。
克服しなくていい弱みとは「それを克服したところでバリューアップにつながらない」ものです。
たとえばドラゴンクエストというゲームを例にすると、魔法使いにとって「ちから」は克服しなくていい弱みに相当します。魔法使いは呪文を唱えることで価値を発揮することが仕事であり、「ちから」を活かした直接的な格闘は戦士や武闘家が行います。そのため魔法使いは「ちから」よりも、呪文の効果に影響を与える「かしこさ」のほうが何倍も重要になります。
多くの場合、仕事はチームで行うので、それぞれの得意分野を持ち寄って自分の得意分野で価値を発揮できれば良く、苦手なことはチームメンバー同士で相互にカバーします。そのため、魔法使いが「ちから」をアップさせてもバリューアップにはつながりません。
それでは、魔法使いは「かしこさ」だけを伸ばせばいいのでしょうか?
やはり克服しなければならないものもあります。それは「最大HP」です。HP(ヒットポイント)とは生命力のようなもので、戦闘でダメージを負ってHPが0になると戦闘不能になってしまい、呪文を唱えて貢献することもできなくなります。
ゲームでは、魔法使いのHPは他の職業と比較すると最低水準に設定されていることが多く、プレイヤーは最大HPをアップさせるアイテムを魔法使いに使用して、行動不能になる確率を減らして価値発揮できる時間を増やしていきます。
つまり、克服すべき弱みは、弱みの中でも「強みを活かす上での阻害要因となっているもの」を指します。
これは現実世界であれば「信頼」と「語学力」などがわかりやすい例として当てはまるでしょうか。
「あの人の◯◯な部分は高く評価できるけど、周囲とのコミュニケーションが高圧的で自分勝手なところがあって信頼が不足しているので、今よりも責任のある仕事を任せられない」というケースや、「仕事はできる人だけど、海外の仕事は語学力が不足していて、やらせられない」というケースです。
これらはキャリア上のボトルネック(全体の能力や成果に影響する要因)となりやすいのですが、改善できればキャリア全体の底上げにつながります。
Twitter @AotaTsutomu
1999年筑波大学第一学群人文学類卒業。2014年早稲田大学大学院 商学研究科(MBA/人材・組織マネジメント系モジュール) 修了。2003年GCDF(米国CCE, Inc. 認定キャリアカウンセラー資格) 合格。
リクルートおよびリクルートメディアコミュニケーションズに通算10年在籍し「リクナビ」の学生向けプロモーション、求人広告の制作ディレクター、自社採用担当を務める。 その後、ドリコム、アマゾンジャパン、プライスウォーターハウスクーパースなどで人事マネージャー(主に中途採用領域)を経て、2015年より日本最大のHRネットワーク『日本の人事部』にて、人事・人材業界向け講座、人事の交流会・勉強会組織、HR Techメディアなどを立ち上げる。2017年にLINE入社。人材支援室副室長を務めたほか、マネジメント層の成長支援プロジェクトのリード、採用・タレントマネジメントなどさまざまなプロジェクトを推進。LINE在籍中の2021年にCast a spell合同会社を設立。
現在は250名の勉強会コミュニティ「採用を体系的に学ぶ会」、2900人の匿名相談コミュニティ「人事のへや」などを企画・運営しつつ、美大進学のため美術予備校「すいどーばた美術学院」に通学中。 著書に『採用に強い会社は何をしているか 〜52の事例から読み解く採用の原理原則』(ダイヤモンド社)がある。※画像をクリックするとAmazonに飛びます。