本記事は、青田努氏の著書『図解 「いいキャリア」の育て方 「5つの資」から考える人生戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の中から一部を抜粋・編集しています。

意思
(画像=Kwanchanok / stock.adobe.com)

いい選択をするには?

挑戦権(資格)を得るために大切なことのひとつに、は「意思決定」があります。

人生は選択の連続で、何度も意思決定を繰り返していきます。仮にミスチョイスをしてもやり直す手段はあるでしょうが、仕事選びは重要な意思決定になるからこそ、外したくないという人も多いかと思います。

それでは、いい選択をするにはどうすればいいのでしょうか?

分解してみると、選択には5つの要素があります。この5つの要素と、それらに対する阻害要因をセットにして整理してみると、次の図のようになります。

『「いいキャリア」の育て方 「5つの資」から考える人生戦』より引用
(画像=『図解「いいキャリア」の育て方 「5つの資」から考える人生戦略』より引用)

要素1. 選択肢

第1の要素は「選択肢」です。いい選択ができる可能性を高める上で、選択肢を増やしていくこと自体はムダではありません。

選択肢だけ多くても意味はないのですが、とはいえあまりに少ない状態だと「自分にとってのいい選択肢」が含まれていない可能性もあります。

キャリア選択の場であれば、内定が得られていない状態では入社する会社を選びようがない、という状態です。

そのため、特に若いうちは選択肢を広げるための努力が必要です。

内定によって選択肢を得るだけでなく、自分が「この仕事も面白そう」「こういう働き方もありだな」と思えるように自身の価値観 = 選択肢となるゾーンの拡大をしていくことが大切になってきます。

また、自身を成長させて内定を得やすくすることもこれに相当します。

要素2. 選択基準

第2の要素は「選択基準」です。選択肢があればあるほど、それらの中からより良いチョイスをするためには選択基準が必要です。

たとえば就職・転職であれば「やりがい」「給与」「ワークライフバランス」「今後のキャリアの広がり」などたくさんの要素がある中で、何をどれくらいの割合で重視するのか、「自分にとっての基準」がなくてはより適した選択をすることができません。

ここで大事なのは、世間一般の基準や世間体・他人の評判ではなく、あくまでも自分の主観・価値観・感覚・欲を踏まえて考えるということです。

グルメサイト上の星の数のみで判断するのではなく、ちゃんと自分の味覚を信じることと同じです。自分は何に喜び、何を大切にするのか、心の声を大切にしてください。

なお、一般的に「選択肢が多いと選べない」と言われることもありますが、そんなことはありません。この基準や選択軸さえハッキリしていれば、選択肢が多いことはそのままプラスになります。

要素3. 判断力

第3の要素は「判断力」です。選択肢(要素1)が豊富でも、選択基準(要素2)が明確でも、判断を誤っては意味がありません。

それでは判断を誤らせるものは何でしょうか? 大きく分けて2つあります。

1つめは「情報不足」です。断片的な情報や信頼性の低い情報しか持たずにイメージで入社先を決めた就活生が、社会人になってから「こんなはずじゃなかった」とギャップを感じるパターンがこれに当てはまります。

2つめは「認知バイアス・認知の歪み」です。人は常に正しく物事を認知できるとは限りません。

思考の誤りや思い込みが、意思決定や選択に影響を与えることがあります。認知バイアスや認知の歪みの存在を知っていることは、「自分は認知バイアスにとらわれていないか」と見つめ直す上で有効です。

代表的な認知バイアスと認知の歪みをまとめたので、自分が無意識に当てはまっていないか、確認してみてください。

『「いいキャリア」の育て方 「5つの資」から考える人生戦』より引用
(画像=『図解「いいキャリア」の育て方 「5つの資」から考える人生戦略』より引用)
『「いいキャリア」の育て方 「5つの資」から考える人生戦』より引用
(画像=『図解「いいキャリア」の育て方 「5つの資」から考える人生戦略』より引用)

要素4. 決断力

第4の要素は「決断力」です。これは判断力と似ているようですが別物です。判断がどちらかというと「頭・思考」によるものだとしたら、決断はハラ・ハート」によるものです。いわゆるハラ決めです。

人は動物です。動物である以上は未知のものを大なり小なり恐れます。

また、ひとつに決めることはもう一方の選択肢を捨てることだとも言えます。そのため、過剰な「未知のものへの恐れ」「捨てることへの抵抗」は決断を阻害します。

要素5. その後のスタンス

第5の要素は「その後のスタンス」です。意思決定はその瞬間だけでは終わりません。むしろスタート地点です。その後に、自分が決めたことが「正しかった」となるようにしていくプロセスが続きます。

特にキャリアには正解があるわけではなく、事前に予測しきれるものでもないので、正解を選ぶというよりは、選んだものを正解にしていく努力が必要になってきます。

一方で、その意識に縛られすぎるのも危険であり、選択に対して努力することと、状況を見直して調整していくことのバランスが大切です。不退転の覚悟は時として自分を必要以上に苦しめることになります。「意思決定したときの自分は、今の自分とは別の人」という捉え方もありますので、自縄自縛になるようなことは回避しましょう。

過去の自分の選択を正当化したくて意固地になってはいないかと、自身を見つめ直すことも大切です。

人生は選択の連続です。一度選択しただけでは終わりではないので、たまに足を止めて自分の心の声を聴き、そのときに最善だと思える選択を重ねていくことで、満足のいくキャリアを築いていきましょう。

図解 「いいキャリア」の育て方 「5つの資」から考える人生戦略
青田 努(あおた・つとむ)
Cast a spell合同会社 代表
Twitter @AotaTsutomu

1999年筑波大学第一学群人文学類卒業。2014年早稲田大学大学院 商学研究科(MBA/人材・組織マネジメント系モジュール) 修了。2003年GCDF(米国CCE, Inc. 認定キャリアカウンセラー資格) 合格。
リクルートおよびリクルートメディアコミュニケーションズに通算10年在籍し「リクナビ」の学生向けプロモーション、求人広告の制作ディレクター、自社採用担当を務める。 その後、ドリコム、アマゾンジャパン、プライスウォーターハウスクーパースなどで人事マネージャー(主に中途採用領域)を経て、2015年より日本最大のHRネットワーク『日本の人事部』にて、人事・人材業界向け講座、人事の交流会・勉強会組織、HR Techメディアなどを立ち上げる。2017年にLINE入社。人材支援室副室長を務めたほか、マネジメント層の成長支援プロジェクトのリード、採用・タレントマネジメントなどさまざまなプロジェクトを推進。LINE在籍中の2021年にCast a spell合同会社を設立。
現在は250名の勉強会コミュニティ「採用を体系的に学ぶ会」、2900人の匿名相談コミュニティ「人事のへや」などを企画・運営しつつ、美大進学のため美術予備校「すいどーばた美術学院」に通学中。 著書に『採用に強い会社は何をしているか 〜52の事例から読み解く採用の原理原則』(ダイヤモンド社)がある。

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