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今後の明暗を分ける日本企業の海外戦略

2014年10月16日、リクルート〈6098〉が東証1部に上場を果たした。公開価格3100円に対して、初値以降、公開価格を上回る高水準での取引が続いている。リクルートの時価総額は、上場2日目の終値時点で2兆円を超え、ソニー<6758>や伊藤忠商事<8001>を上回っている。

社長の峰岸氏は、日経新聞社のインタビューに対して、今回のIPO理由を「株式公開で1000億円を資金調達し、借り入れも含め中期的に7000億円の投資余力ができることを示している。1案件で数十億円から1000億円以上のM&A(合併・買収)ができるようになる。」(出典:日経電子版公開日時2014/10/17より)と語っている。今後のリクルートは、M&Aの活用した積極的な成長戦略によって、海外展開の速度をより一層加速させる。

2014年上半期の日本企業によるM&Aは、2年連続で1千件を超えている。日本企業の中で、積極的に行っている企業と言えば、大半の人がソフトバンク〈9984〉を思い浮かべるだろう。直近でも、ソフトバンクは、インターネット配信を手掛けるドラマフィーバー(米)の買収を発表し、活発なM&Aを続けている。


増加するM&A

M&Aでは、日本企業が海外企業を買収することをインアウトと呼び、日本企業同士が買収合併することをインインと呼ばれる。近年のM&Aの特徴としては、インアウトが多いことが言われている。なぜ、日本企業はM&Aを積極的に活用してまで、成長の活路を海外に求めているのだろうか。

当然、少子高齢化や人口減少といった国内市場が縮小していくことに対する危機感から、新たなマーケットを獲得して、成長を成し遂げたいという一般的な意見がある。しかし、新たなマーケットが実は魅力的ではなく、M&Aに多額なコストをかけたことで、海外展開を失敗してしまった事例も存在する。代表的な失敗事例としては、第一三共<4568>によるランバクシー(印)買収が挙げられる。

近年のM&Aについても、一般的な新たな市場に対する進出という理由も見受けられるものの、先のリクルートやソフトバンクの事例を見ると、違った観点が見え隠れしている。


自社の「経済圏」を強化するM&A

リクルートは、これまでに企業と労働者を繋ぐ「リクナビ」や「タウンワーク」、企業と消費者を繋ぐ「じゃらん」、「ゼクシィ」「SUUMO」といった、人間の日常生活・ライフステージ全ての段階に対して サービスを展開し ている。リクルートの強みは、独自のマッチング手法を活用して、情報格差を解消することで商機を掴むことにある。リクルートは、自身が海外展開を積極的に進めることで、日本企業と海外消費者、海外企業と日本の労働者といった新たな組み合わせで、商機を探している。つまり、自社の強みをより強化するための方法として海外M&Aを実施している。

これは、ソフトバンクにおいて同様であり、コンテンツ事業の強みを強化することで、自社の優位性を確固たるものとしようとしている。単純に新規市場を追い求めて、M&Aをしていた2000年代とは異なった状況を呈している。

リクルートを始めとした日本企業の海外戦略は、M&Aを中心としており、今後も徐々に増加していくことが予想されている。単に海外展開を行えば、常に業績が向上するものではなく、そこに企業の持つ強みが本当に生かされているのかという点に着目していかなければならない。

(ZUU online)

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