本記事は、永江 将典氏の著書『税金でこれ以上損をしない方法』(翔泳社)の中から一部を抜粋・編集しています。

経費・経理・会計イメージ(大量の領収書/領収証・レシート)
(画像=hearty / stock.adobe.com)

レシート・領収書を捨ててしまった経費

レシートに関してよくある質問に答えていきます。

「あれ?レシートどこいっちゃった?」「クレジットカードの明細だけで大丈夫?」「あっ、1枚のレシートにプライベートのアイテムも混ざっちゃっているけど、まあいっか」などなど。皆さん、一度はこんな疑問を抱えたことがあるのではないでしょうか。さあ、これらの疑問に答えていきましょう。

レシートがなくなったらどうしたらいい?

「あれ、もらったはずのレシートがない!」という状況、誰もが経験すると思います。また、レシートが日焼けして文字や数字が見えなくなってしまっていたり。こういうとき、どうしたらいいと思いますか?

まずは、とにかくレシートを探すのが最優先です。家中ひっくり返して家族に怒られてもやむを得ません。とにかくありとあらゆるところを探しましょう。そこまでやっても出てこなかったら……出金伝票を書く、Excelに記録するなどの対応が必要です。

ちなみに、領収書やレシートの保存義務は、青色申告の場合原則7年、白色申告の場合は5年と所得税法で定められています。この期間はしっかりと保存をすることを求められますので、きちんと管理するようにしておきましょう。領収書やレシートがない経費は、税務調査の場面では「経費を使った証拠が確認できないので、経費として認められません! 追加で税金を払ってください!」と言われてしまいます。

出金伝票って何?

ここで、「出金伝票」について説明しておきます。出金伝票は、主に現金での取引内容を記録するための伝票です。仕事をするうえで、現金取引がメインで領収書も発行されないような取引っていくつかありますよね。
例えば、

  • 電車やバスの交通費
  • 取引先の冠婚葬祭の慶弔費
  • 自動販売機で物を購入したとき

こういった場合に、レシートや領収書の代わりとなって経費を使ったことを証明してくれるのが出金伝票です。出金伝票は100円ショップやAmazonなどで簡単に購入できます。

出金伝票を作成する際には、次のような伝票に、「①日付 ②支払い先 ③勘定科目 ④摘要(何を購入したか) ⑤金額」をそれぞれ記載します。ただし、出金伝票の証拠能力はレシートや領収書に比べると弱いです。高額のものを購入したのに出金伝票しかなかったり、出金伝票をあまりに多用していると、「架空経費で経費を水増ししているのでは?」と疑われてしまいます。申告の信頼性を高めるためにも、出金伝票の利用は最低限にして、レシートや領収書をきちんともらうようにしましょう。

税金でこれ以上損をしない方法
(画像=税金でこれ以上損をしない方法)

レシートの代わりにクレジットカードの明細でいいの?

レシートはもらってないけど、クレジットカードのWeb明細があるし、なんとかなるだろう。そんなふうに思っている人も多いのではないでしょうか? 確かにそういう面もあるのですが、ここも注意が必要です。

なぜなら、クレジットカードの明細というのは、大抵「店名」しか記載がなくて、肝心の「何を買ったか」がわからないことが多いためです。

「6月1日 永江書店 11,000円」だけではその内容がビジネス書なのか、最新のコミックを買い漁った結果なのかがわからない。当然、「経費」として計上するための証拠能力も弱くなってしまいます。

税務署というのは、あなたが思っている以上にものすごく厳しい目でチェックしてくるものです。ですから、クレジットカードで買い物をしてもレシートは必ずもらうようにしましょう。

また、あなたが消費税の納税義務者となり、原則ルールで納税することになった場合。売上が1,320万円(消費税120万円)、使った経費が550万円(消費税50万円)だった場合。納税する消費税は120万円−50万円=70万円となります。

しかし、経費の証拠としてクレジットカードの明細しか残っていなかった場合、経費の支払い時に払っていた消費税50万円が払った消費税として認めてもらえず、120万円まるまる全額の消費税を払うことになります。ですので、クレジットカードの明細だけではダメと思っておいて、いつもレシートや領収書をもらう癖をつけておきましょう。

いずれにしろ、「どこで何を買ったか」が明確でない書類は経費を支払った証拠としては不十分だということを押さえておいてください。

面倒ですが、基本的にはレシートをもらうようにしましょう。

プライベートとビジネス用途が入り混じったレシートはどうすればいいの?

それから、プライベートのアイテムとビジネス用途が混ざってしまったレシート。これ、どうすればいいのでしょうか? 

これは、このままでも証拠として使うことはできます。ただし、経費として認められる部分だけをきちんと計上するために、プライベートの部分はきちんと除外する必要が生じます。

というと、「そんなの一緒になっていたらわからないでしょ……」と思う人もいるかもしれませんが、意外とこういうのがバレやすいのです。

だって、オフィスで使うトイレットペーパーやティッシュの量なんて、たかが知れていますから。それを何箱も買い溜めているようなら「あ、プライベートで使うものも一緒に買い溜めしているな」と思われても仕方ないですよね。

と、こんなふうにレシートというのはあなたが思っている以上に大事な役割を持っているのですが、多くの方がこれらのポイントをしっかりと理解していないのが現実です。

過去、税務調査をサポートした方の中には、「白色申告だからレシートや領収書は保管しなくていい、捨ててOKと思っていました!」という方がいました。

その時の調査官の方は優しい方だったので、「だいたいこのくらいの経費は使っていたでしょう?」という経費を認めてくれましたが、証拠がなく「保管義務を怠っていたあなたが悪い!」と言われてしまえば、経費は0円と言われても文句は言えなくなってしまいます。

税金でこれ以上損をしない方法
永江 将典(ながえ・まさのり)
公認会計士、税理士。税理士業の他、4つの会社を運営する複業オーナー経営者。
1980年愛知県生まれ。2003年、早稲田大学理工学部応用物理学科卒業。2003年、公認会計士試験に合格し、監査法人トーマツへ入社、一部上場企業の監査や、株式公開支援など約30社を担当。
社会のレールに乗せられ、自分のやりたいことが見つからないまま、気づけば嵌ってしまっていた「社畜」の沼。月間残業200時間超えの生活に疲弊し、2008年、ホワイト企業の代表格「世界のトヨタ」へ転職。
しかし、常に感じる劣等感や人間関係に疲れ、経理部の仕事にもまったくやりがいを感じられない日々を送る。
2012年、夢と自由、本当の自分を求めて32歳で無計画に起業。年収700万円の超安定会社員から、年収150万円以下の社会の底辺へ。自分を殺し泥水をススるような営業に身を削るどん底時代に、シンガポールの億万長者にお金を稼ぐ極意を学ぶ。
その後3年で、税理士業は5店舗へ拡大。お金を稼ぐ極意は凄まじく、YouTubeでは3ヶ月で1億円を稼いだり、飲食業やリハビリ業、不動産業などを開始。2018年、法人化し、事務所名を税理士法人エールへ変更。
現在は、東京丸の内、新宿、横浜、大阪の店舗を運営するオーナー経営者となる。

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