会社勤めの人の給与と同じように、年金の「支払額」と「手取り額」には差がある。「天引き」が行われるからだ。このことを知らないと、実際に手にする年金が想定より少なく、思い描いていたシニアライフが送りにくくなるかもしれない。具体的に何が天引きされるのかを解説していく。

年金の「支給額」と「手取り額」の差

年金の「手取り額」はこう決まる ! 天引きによる支払額との差に注意
(画像=mapo / stock.adobe.com)

年金を口座振り込みで受け取っている人には、毎年6月に「年金振込通知書」が届く。この年金振込通知書には、その後、2ヶ月に1回支払われる振込額などが記載されている。

実際の振込額は「控除後振込額」として記載されており、この金額が「年金支払額」からさまざまな天引きがされたあとの金額で、いわゆる「手取り額」だ。ちなみに天引きすることを「特別徴収」と呼び、それらを差し引くことは「控除」と表現される。

以下は日本年金機構の公式サイトに掲載されている年金振込通知書のサンプルだ。

天引きされる項目は大きく「保険料」と「税金」に分けられる。次項より、それぞれについて詳しく説明していこう。

天引きされる項目「保険料」

年金支払額から天引きされる保険料として「国民健康保険料」「後期高齢者医療保険料」「介護保険料」がある。

これら全てが天引きされるわけではなく、年齢やその他の条件などによってどれが天引きされるかが異なってくる。例えば、介護保険料だけが天引きされるケースもあれば、介護保険料と後期高齢者医療保険料が天引きされるケースもある。

それぞれの金額は、住んでいる市区町村によって決定される。

国民健康保険料

国民健康保険料の天引きは、年齢が65歳以上75歳未満であり、かつ、「老齢」「退職」「障害」「死亡」を理由に年金を受給している人であり、受給している年金の額が年間18万円以上の人が対象となる。

後期高齢者医療保険料

後期高齢者医療保険料の天引きは、年齢が65歳以上75歳未満で寝たきり等一定の障害がある人か、もしくは年齢が75歳以上で、かつ、「老齢」「退職」「障害」「死亡」を理由に年金を受給している人であり、受給している年金の額が年間18万円以上の人が対象となる。

後期高齢者医療保険制度とは、75歳以上もしくは一定の障害がある65歳以上の人が加入する医療制度だ。

介護保険料

介護保険料の天引きは、年齢が65歳以上で、かつ、「老齢」「退職」「障害」「死亡」を理由に年金を受給している人であり、受給している年金の額が年間18万円以上の人が対象となる。

天引きされる項目「税金」

年金支払額から天引きされる税金としては「所得税および復興特別所得税」と「個人住民税」がある。

所得税額および復興特別所得税額

所得税額および復興特別所得税額は、特別徴収された保険料や各種控除などが年金支払額から差し引かれたあとの金額に5.105%を掛けて決定される。この「各種控除」については後述する。

個人住民税額

個人住民税も天引きされる。金額は前年の所得の金額から算出される。

「控除」の制度をうまく活用しよう

先ほど「所得税額および復興特別所得税額」の説明で「各種控除」について触れた。年金の受給者も扶養控除や障害者控除などの仕組みを活用することで、所得税額が抑えられる。

こうした控除を受けるためには、「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」の提出が必要となる。この申告書は対象者に順次発送される。申告をしなければ控除を受けられないため、注意が必要だ。

年金の天引きは資産運用で補おう

年金を受け取り始める前に年金の支払額と手取り額に差があることを知り、シニアライフで思った以上に使えるお金が少ないと感じたのなら、なるべく早めに資産運用を始め、天引き分を補填できるようにしておきたい。

資産運用においては、高齢になるほどリスクを抱えやすくなる。給与などによる損失の穴埋めがしにくいからだ。

50代以降で資産運用を始める際は、リスクが低めの国債などの比率を高めにして、金利収入が安定して得られる外貨預金などもうまく組み合わせたい。

資産運用で老後の備えを万全に

年金の支払額と手取り額に差があることをあらかじめ知っていれば、実際に年金の受給が始まってから焦ることはなくなるだろう。

また天引きがあることを考慮し、今から資産運用を始めて将来に備えておくことも重要だ。ただしその際は、現在の年齢を踏まえた上で投資商品を選ぶようにしたい。特に50代以降の場合は、リスクの高い投資商品は避けるようにしよう。

(提供:大和ネクスト銀行


【関連記事 大和ネクスト銀行】
大切なのは「お金より時間」? お金の管理を「時間」に応用しよう
個人投資家の強みを活かす ! 機関投資家が参入しづらい銘柄の特徴
知っているとお得な「株主優待知識」をおさらい ! 全4選
落語で学ぶ「お金にまつわる」3つの教訓
富裕層が米ドルを選ぶ理由「殖やす」以上に大切なコト