TOB(株式公開買い付け)がここへきて急増している。先週(6~10日)だけで12件の発表があり、2023年のTOB件数(届け出ベース)は15日時点で68件と、1カ月半を残して前年59件を大きく超えた。このペースでいけば、2021年70件を間もなく上回り、2009年(79件)以来14年ぶりの活況となりそうだ。

TOBラッシュの様相

2023年のTOB件数は10月末で53件と、同時点の2022年51件、2021年50件をわずかに超える程度だった。ところが、3連休明けの6~10日はTOBラッシュの様相を呈した。1週間12件は異例の多さで、週末を控えた木曜、金曜は各5件という集中ぶりだった。さらに週明け13日、14日も各2件の発表があり、11月だけで16件(うち1件は発表段階で、TOB開始前のため、届け出の件数にはカウントしていない)に上る。

2022年は11月から12月にかけての2カ月間で8件とやや失速し、年間59件にとどまった。その前年の2021年は最後の2カ月間で20件を積み増した結果、年間70件まで伸ばし、2009年(79件)以来の多さとなった。足元はこの2021年をしのぐ勢いを見せており、年間80件台に乗せる可能性もある。

M&A Online

(画像=※2023年は11月15 日時点。M&A Onlineが集計・作成、「M&A Online」より引用)

ベネッセ、最大級のMBOで非公開化

先週末、話題を呼んだのが通信教育「進研ゼミ」などを展開するベネッセホールディングス(HD)。スウェーデンの投資会社ファンドEQTと組み、TOBの一環としてMBO(経営陣による買収)を行い、株式を非公開化すると発表した。買付総額は2079億円と、MBOとしても過去最大級。2006年に外食大手のすかいらーくが2700億円規模のMBOを実施したのに次ぐ。

ベネッセHDは少子化による学生人口の減少や、教育のデジタルシフトなどの経営環境に対応するため、非公開化により株式市場からいったん退場し、抜本的な事業構造改革を進める狙い。TOBは2024年2月上旬をめどに始める(※発表段階にとどまるため、届け出件数には含めていない)。

同じくMBOによる非公開化を目的にTOBを行うのがシダックスだ。創業家の資産管理会社がMBOに最大365億円を投じる。主力の給食事業は原材料費の高騰や人出不足などで厳しい状況に直面しており、非公開化後に食材宅配大手のオイシックス・ラ・大地の傘下に入ることになっている。

独立系ソフト開発会社の富士ソフトは件数を“荒稼ぎ”した。サイバネットシステム、ヴィンクスなど上場子会社4社をTOBで完全子会社化する。4社合わせて買付総額は410億円。富士ソフトは物言う株主として知られるシンガポール投資ファンドの3Ⅾインベストメント・パートナーズと対立状態にある。3Ⅾは富士ソフトに対し、取締役会機能の強化や低資本効率の改善などを求めている。