多くの企業が後継者難に直面する中、近年ではアトツギベンチャーが注目されている。経営資源やノウハウを後世に残したい経営者にとって、アトツギベンチャーは有効な選択肢のひとつだ。どのような仕組みなのか、本記事では主な特徴や最新事例を紹介する。

目次

  1. アトツギベンチャーとは?
    1. 日本各地で育つ次世代の起業家たち
  2. アトツギベンチャーが注目される背景とは
    1. 公的機関もアトツギベンチャーを後押し
  3. アトツギベンチャーのタイプとそれぞれの目的
    1. Exit型アトツギ
    2. 地方豪族型アトツギ
    3. ランチェスター型アトツギ
  4. アトツギベンチャーはイノベーションをどう創出するのか
    1. 既存事業の承継と新規事業のローンチを同時に行う
    2. 分野によっては官民連携のサポートが必要に
  5. アトツギベンチャーの先進事例2つ
    1. 事例1.研鑽を積んだアトツギが既存事業とデジタル技術を融合/アイビック食品
    2. 事例2.MVVや管理会計の整備で、地域のゼブラ企業に成長/神馬建設
  6. アトツギベンチャーは今後も注目される可能性が高い
家業に新風を起こすアトツギが急増中
(画像=metamorworks/stock.adobe.com)

アトツギベンチャーとは?

日本各地で育つ次世代の起業家たち

アトツギベンチャーとは、若手後継者である”アトツギ”が先代から譲り受けた経営資源を活用し、イノベーションなどの新領域に挑戦することである。一般社団法人ベンチャー型事業承継が提唱した新しい考え方であり、主な目的は「永続的な企業の存続」と「社会に新たな価値を生み出すこと」とされている。

ここでいうアトツギとは、主に先々代の経営者から同族承継で事業を引き継いだ人物だ。未来の経営者として有望ではあるものの、該当する後継者は公的な支援対象から外れていることが多い。

<アトツギとは?>

会社の永続にコミットしながらも
「親子」という圧倒的な上下関係があり
時代感に30年の「ギャップ」がある先代から
経営を引き継ぐ人

(引用:中小企業庁「~地域のアトツギの挑戦が地域の未来を創る~ 一般社団法人ベンチャー型事業承継について」)

アトツギに求められる役割としては、次のような点が挙げられる。

・先代から受け継いだノウハウを、さらに次の世代に託すこと
・ノウハウを現代の価値でアップデートすること
・地域に根差して、持続可能な事業にすること

ベンチャーを立ち上げる目的は、IPO(新規株式公開)やバイアウトだけではない。運営方針によっては、廃れるリスクが高い事業や地域を救ったり、貴重なノウハウを継承したりする役割を担えることもある。

アトツギベンチャーの役割はまさにその部分であり、すでに日本全国で新たな挑戦に取り組むアトツギが増えている。