本記事は、大原昌人氏の著書『ハッタリの作法 自分を最高値で売る「見せ方」と「辻褄合わせ」の技術』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

ビジュアル
(画像=kichigin19 / stock.adobe.com)

ハッタリを最大化させたいなら「ビジュアル」を使え

同じような成績を上げているのに評価される人、されない人がいるのと同様、似たような内容の提案書でも、「これはすごい、ぜひやりましょう!」と言ってもらえる場合と、すげなく却下されてしまう場合とがあります。これも完全にハッタリ力があるかないかの違いで、社内会議用でも対クライアント用でも、ウケがいい資料はおしなべてハッタリが利いています。

一般的なプレゼン資料は「起承転結」で作られています。「起」すなわち「世の中では今こういう問題が起きています」という問題提起から入って、「承」では「こういう商品やサービスを使うといいですよ」と解決策を示し、次の「転」では「そうすればもっと儲かりますよ」と話を広げ、「結」として「数年先にはこんな未来が待っています」とゴールを示すのです。

起承転結型の資料はわかりやすく、親切な設計ではあるものの、導入にあたる「起」の部分で退屈な印象を与えてしまうことがままあります。業界や市場の動向などは、関係者にとっては周知の事実であることが多いので「そんなこと言われなくてもわかっている」と思われてしまうのです。

相手が初対面やそれに近いお客様の場合は特に、こちらへの信頼や期待感がないと真剣に話を聞いてくれないので、導入でいかに「この人(会社)はすごそうだ」と思ってもらえるかが勝負のカギを握ります。

だから私は商談やプレゼンの資料を作るときは、背景云々よりもまず「実績紹介」から入ります。取引先に花王やコカ・コーラ社、東洋経済オンライン、NTTドコモといった名だたる大手企業が名を連ねていることや、楽天時代に数百億円の売上をたたき出したこと、テレビをはじめとするメディアに多数出演していることなど、自分のキャリアの中でも特にインパクトのある実績を最初にバババッと見せるのです。

ポイントは、文字ではなく「ビジュアル」を多用することです。文字の説明文なんて誰も読みたがりませんが、見慣れた大手企業のロゴを並べておけば「なるほど、この会社と取引をしているのか」と一発で視認してもらえます。メディア出演の実績だって、文字で1行「フジテレビの『全力!脱力タイムズ』に出演」と書くだけでは見落とされたり、ピンとこなかったりするでしょうが、番組出演時のキャプチャーを貼っておけば「あの芸能人と並んでテレビに出たのか」と、すごさを一瞬で理解してもらえます。

このようにビジュアルの力を総動員して実績を羅列すると、ヒューリスティックやハロー効果がより強烈に作用して「この人は超すごそうだ」「テレビにも出ている売れっ子だ」「この人に頼めば間違いないだろう」というように、強い信頼や期待感が醸成されます。商談の冒頭でこれをやっておくのとおかないのとでは大違いで、最初に「すごい人」というイメージができてしまえば、こちらの企画や提案をすんなり受け入れてもらえる可能性が格段に高まります。

自分の意見を通したいなら「二択」から選ばせよ

自分の企画や提案が通るかどうかは、企画の内容そのものよりも、ハッタリの利いたプレゼンができるかどうかで決まります。ふつうに提案すれば50点どまりの企画でも、プレゼンのやり方がうまいと80点、90点レベルの企画に見せることができるのです。

私がおススメするプレゼン法は、前項で説明したようにハッタリの利いた資料を作ることに加え、プランを「2案」用意することです。これは社内外を問わず使える万能のテクニックで、私自身、楽天時代の企画会議でも現在のクライアントワークでも、自分の意見を通したいときには必ずこの作戦でのぞんでいます。

ほとんどの人は、上司やクライアントに何かを提案するとき、自分が本当にいいと思うプランを1つだけ持っていきますが、私は必ず2案用意して、「プランAとプランBならどちらがいいですか」とその場で選ばせます。すると相手の頭の中は「この二択から選ばなければならない」という錯覚で満たされ、それ以外の案を求めるという発想が消し飛んでしまうため、よほどのことがない限り2案のどちらかに決まるのです。

これが1案だけ持っていくとどうなるかというと、どんなにすばらしい企画であっても、たいていは「もっと違う方向からも考えてみて」とか「ここをもっと練ってほしい」などと言われてしまいます。簡単に対応できる要望ならまだしも、ときには自分が苦手な方向での検討や、面倒くさい修正を求められることもあります。

そうした事態を回避するためにも、最初からA案とB案を持っていき「選択肢はこれしかない」という錯覚に誘い込むのです。そうすれば面倒なフィードバックをまぬがれることができるうえ、ふつうの人よりも上司やクライアントの「イエス」を取るスピードが早くなります。すると、同じ仕事をしていても「仕事が早い」という評価をもらえるし、浮いた時間を自己研鑽やほかの仕事にまわしていけば、さらに評価が高まるというわけです。

「2案も作るのは大変そうだ」と思った方、ご心配には及びません。本命のA案はしっかりと作りこまなければなりませんが、もう1つのB案については、やっつけ仕事でも十分です。B案のレベルが低ければ、それだけA案のよさがきわだつからです。

逆に、2案どちらも気合を入れて作ってしまうと、それに時間を取られるうえ、相手が「どちらもいいな」と迷ってしまい、あげく「2つの要素を合わせて1案にまとめてほしい」なんてことを言われかねません。そんな面倒なことを言わせないためにも2案目は力を抜いて作り、「B案は微妙だけどA案はすごくいい」という見せ方にするのがいいでしょう。

『ハッタリの作法』より引用
大原昌人(おおはら・まさと)
元「楽天市場」プロデューサー/株式会社ダニエルズアーク代表取締役

慶應義塾大学環境情報学部卒業。楽天市場全体のビジュアルを統括するWebプロデューサー・ディレクターとして、数々のヒット企画に参画する。2016年4月、熊本地震発生直後に4万4000人を巻き込む一大プロジェクト「買って応援企画」を達成し、同年「楽天市場 MVP 賞」を受賞。2017年からは、国内最大級の流通額を誇る「楽天スーパーSALE」の総合プロデューサーに当時最年少で就任。4万8000店舗の統括を行いながら、流通総額600億円強の売上最高記録を生み出した。
2018年、株式会社ダニエルズアークを設立し、代表に就任。コカ・コーラ、サムスン、花王など、大企業からの引き合いが絶えず、YouTube・TikTokプロデュース事業では、コンサルティング実績200チャンネル以上。累計391万チャンネル登録を超えるYouTube・TikTokチャンネルのプロデュースに関わっている。
2023年にリリースした高級アイスクリーム自社ブランド「Cellato」では「世界で最も高額なアイスクリーム」としてギネス世界記録を取得し、世界中のテレビ・新聞・ラジオ等で反響を呼んでいる。
著書に『4000万人の購買データからわかった! 売れない時代にすぐ売る技術』(サンマーク出版)『すべての仕事を2分の1の時間で終わらせる ガチ速仕事術』(ぱる出版)『これからの集客はYouTubeが9割』(青春出版社)など多数。

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