本記事は、大原昌人氏の著書『ハッタリの作法 自分を最高値で売る「見せ方」と「辻褄合わせ」の技術』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

ハッタリ
(画像=emotionpicture / stock.adobe.com)

クライアントも上司も、実はハッタリを求めている

私は上司やクライアントから仕事の打診をされたとき、一片の迷いもみせずに「できます!」と即答することで、同期や競合との差別化を図ってきました。

この手のハッタリをかませない人は、「上司やクライアントにはできる限り正確な情報を伝えなければならない」と考える、非常にまじめな人が多いのではないかと思います。

だから、頼まれた仕事を本当にこなせるか入念にシミュレーションしたうえで「多分できると思いますが、もしかしたら納期を1日、2日くらい過ぎてしまうかもしれません」などと極力正確に回答する。それが誠実な対応だと信じているのでしょう。

しかしながら、上司やクライアントというのは、常に100%正確な答えを求めているわけではありません。特に「この仕事できそう?」と尋ねるときは、完璧にできるかどうかではなく、本人の感覚としてできそうかどうかを聞いているケースがほとんどです。だから、なんとかできるレベルの話なら、四の五の言わずに「できます!」と即答するのが一番相手のためになるのです。

仕事を始めたばかりのド新人でもない限り、それが絶対に無理な話なのか、頑張ればできそうなことなのかは判断がつくはずです。たとえば「明日までに国立競技場を完成させてほしい」という依頼は物理的に100%無理ですが、「明日までにプレハブ小屋を完成させてほしい」なら、ものすごく頑張れば不可能ではありません。その感覚をもとに、頑張ればなんとかなりそうな依頼に対しては、ノールックで「いけます!」と答え、後で必死に辻褄を合わせるのです。

特に私のようなコンサル業の場合は、大風呂敷をめいっぱい広げて「私ならできますよ!」と相手を安心させてあげることが非常に大事になります。

なぜならコンサルタントは方針を示すだけで、それを実際に行うのは相手会社の社長や従業員だからです。コンサルが自信なさげに「こうすれば多分うまくいくと思うのですが……」なんて言っていたら、実行部隊は「コイツの言うとおりにして大丈夫かよ」と不安になり、半信半疑で取り組むことになるから、結果として成果も上がりません。反対に、コンサルが「私の言うとおりにやってくれたら絶対に大丈夫ですよ!」と自信満々で背中を押してあげたら、相手も大船に乗った気持ちになって全力で頑張ってくれるので、必ず良い結果につながるのです。

だから私はクライアントの前では常に自信に満ちたそぶりでふるまいます。商談中に知らない業界用語が出てきたとしても、その場で「どういう意味ですか?」と聞いたりせず、さもパソコンで資料をまとめているようなふりをしてこっそり意味を調べ、当然知っていたものとして話を続けます。それくらいのハッタリは、高額なフィーをもらっている者として当然の礼儀であると思っています。

なお、大見得を切って「できます!」と答えたものの、後から「やっぱり厳しいかもしれないな……」と心配になってしまうことは、私でもときどきあります。そんなときは後からメールや質問をして、レベル感や納期を調整していきましょう。ハッタリのインパクトは多少薄れるかもしれませんが、それでも商談時に自信がない姿を見せるよりは、ずっとマシです。特に高額な報酬が発生する商談のときは、いまいち自信がなかったとしても「うーん」と迷ったりせず「できます!」と言い切った方が、トータルで完全にプラスになります。

報酬が安すぎる案件など、予算的に「できます!」と言い切ることができない仕事は、そもそも受けるべきではないのできっぱり断りましょう。ただし、実際に会って商談をしてから「その予算だと厳しいですね」となるのは時間の無駄なので、私の場合は、新規の顧客から問い合わせがあった時点で、年商規模や予算感などをざっくりヒアリングします。そして予算があまり潤沢でない場合は、こちらもそれに合わせた簡易的なプランを提案し、圧倒的に予算が足りない場合は、いちいち会わずにメールでお断りするようにしています。

納期が短すぎたり、スケジュールがパンパンでどう考えても対応できない場合は、お断りするか、もしくは工程の一部だけ引き受けます。ただし「この部分しかできません」という言い方では芸がないので、「社内にノウハウを貯めるためにも、この工程は御社でやられてはどうでしょう。将来的に外注を使わずインハウス化できるからコスパもいいですよ」というような断り方をします。これなら「せっかく依頼したのに断られた」ではなく「私たちのことを考えてアドバイスしてくれた」という前向きな印象を残せます。

ハッタリからの辻褄合わせで、人は劇的に成長する

ハッタリを言うのがうまい人は、そうでない人にくらべてはるかに高い評価を受けることになりますが、すべてのハッタリ屋が成功しているわけではありません。いくらハッタリがうまくても、そのハッタリを回収して現実にする力がなければ、単なるホラ吹き野郎で終わってしまいます。

そう、タイトルに「見せ方と辻褄合わせの技術」とあるように、ハッタリをかました後は必ず裏で辻褄を合わせ、ハッタリを現実にしなければなりません。真のハッタリ屋とは、口先でうまいことを言うだけではなく、陰でしっかり努力している人なのです。

ハッタリを単なる「ラクして評価される技術」だと思っていた方は、「なんだ。結局、努力が必要なのか」と少しガッカリされたかもしれません。

でも、ハッタリを使わずに努力するのと、ハッタリを使いつつ努力をするのとでは、後者の方が確実に評価されるのだから、ハッタリは使った方がいいに決まっています。

それに、よく考えてみてください。仮に辻褄合わせの努力をせず、口先のハッタリだけでやっていくとなれば、ハッタリの表現力は磨かれるけれど、実務的なスキルや知識の面では、いつまで経っても成長できません。能力的には未熟なまま、ハッタリ力だけを頼みに生きていくなんて、さすがにリスクが高すぎるのではないでしょうか。

真のハッタリ屋は、最初に「できます!」と宣言したら、それを現実にするため死に物狂いで辻褄を合わせます。経験が浅いうちは「できます!」と言っておきながら納期に間に合わないなど、ハッタリを回収しきれないこともあるかもしれませんが、その経験は必ず自分の血肉となります。だから、できるかどうかギリギリのラインでもとりあえず「できます!」とハッタリをかまし、「できると言ったからにはやるしかない」と自分を追い込んだ方がいいというのが私の考えです。

ほとんどの人は、厳しそうな打診に対しては「できます!」とは言わず、「多分できると思いますが、もしかしたら数日は遅れるかもしれません」などと保険をかけて回答します。でも、それをやってしまうと自分の限界ラインを引き出せないので、結果として成長は鈍くなります。毎回そんなふうに保険をかけている人と、毎回「できます!」と宣言して自分を追い込んでいる人とでは、3年後には圧倒的な実力差がついていることでしょう。

ハッタリからの辻褄合わせが人を劇的に成長させることを、私自身、何度も体験してきました。中でも思い出深いのは、楽天時代に熊本地震の被災地支援として「熊本買って応援企画」を提案したときのことです。

まだ「働き方改革」という言葉もなかった時分、IT関連企業はどこも残業が多く、私たちのチームもご多分にもれず多忙な日々を送っていました。そんなとき熊本地震が発生し、「自分にも何かできないか」という一心で考えたのがこの企画です。

提案は異例のスピードで採択されましたが、当然ながら前々から決まっていた仕事ではないので、発案者である私は、通常業務と並行して「熊本買って応援企画」を進めなければならなくなりました。上司から「通常業務も減らせないけど大丈夫なのか?」と確認された私は、このときも「全然いけます、大丈夫です!」と大ハッタリをかましました。

しかし本当は、全然大丈夫ではなかったのです。ただでさえ多忙なところに、今までやったことがないタイプの企画が加わり、正直言って死にそうでした。しかし「全然いけます」と言い切った以上、何が何でも辻褄を合わせなければならないと、文字通り寝る間も惜しんで働きました。結果、通常業務も首尾よくこなしつつ、ふつうなら準備期間として2カ月はかかる規模の「熊本買って応援企画」をわずか1週間でリリースまでもっていき、その功績で楽天市場MVP賞もいただきました。

熊本企画の準備をしていた1週間は、人生でも3本の指に入るキツさでしたが、このとき身につけた筋力のバネは私のキャリアの根幹となっています。今振り返っても、本当にやってよかったという感想しかありません。

人が成長するためには、何らかの負荷が必要になります。そのきっかけをもたらしてくれるのがハッタリで、自分から「できます!」と宣言し、周りにも聞かせてしまった以上は、もうやるしかない。ハッタリは地力を鍛えるトレーニングにもなるのです。

私が最近ハマっている「冷水シャワー」も、自分に負荷をかけ、自分ではコントロールできない能力を引き出すという意味で、ハッタリに通じるものがあると感じています。これは真冬につめたいシャワーを1分ほど浴びる健康法で、冷水という強いストレスにさらされると、脳は冷水の不快感を消すことに集中して余計なことを考えなくなるので、ネガティブな感情が抜けやすくなると言われています。

私の実感としても、冷水シャワーを浴びた後は非常に爽快で、Tシャツを1枚はおるだけで「なんて温かいんだ!」と幸せな気分がこみあげます。それは壮大なハッタリを首尾よく回収できたときの安心感、達成感にも似ているように思います。

『ハッタリの作法』より引用
大原昌人(おおはら・まさと)
元「楽天市場」プロデューサー/株式会社ダニエルズアーク代表取締役

慶應義塾大学環境情報学部卒業。楽天市場全体のビジュアルを統括するWebプロデューサー・ディレクターとして、数々のヒット企画に参画する。2016年4月、熊本地震発生直後に4万4000人を巻き込む一大プロジェクト「買って応援企画」を達成し、同年「楽天市場 MVP 賞」を受賞。2017年からは、国内最大級の流通額を誇る「楽天スーパーSALE」の総合プロデューサーに当時最年少で就任。4万8000店舗の統括を行いながら、流通総額600億円強の売上最高記録を生み出した。
2018年、株式会社ダニエルズアークを設立し、代表に就任。コカ・コーラ、サムスン、花王など、大企業からの引き合いが絶えず、YouTube・TikTokプロデュース事業では、コンサルティング実績200チャンネル以上。累計391万チャンネル登録を超えるYouTube・TikTokチャンネルのプロデュースに関わっている。
2023年にリリースした高級アイスクリーム自社ブランド「Cellato」では「世界で最も高額なアイスクリーム」としてギネス世界記録を取得し、世界中のテレビ・新聞・ラジオ等で反響を呼んでいる。
著書に『4000万人の購買データからわかった! 売れない時代にすぐ売る技術』(サンマーク出版)『すべての仕事を2分の1の時間で終わらせる ガチ速仕事術』(ぱる出版)『これからの集客はYouTubeが9割』(青春出版社)など多数。

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