本記事は、大原昌人氏の著書『ハッタリの作法 自分を最高値で売る「見せ方」と「辻褄合わせ」の技術』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

相場
(画像=Lisa_Art / stock.adobe.com)

良いものと錯覚させたいなら、相場の「2倍以上の値段」を付けよ

錯覚を生むうえでは、値段の付け方も重要なファクターとなります。

「やっぱ安くないと売れないよね」と思った方は、残念ながら不正解です。デフレが長く続いた日本では「安い方が売れる」「値段を上げたら客が離れる」と思いこんでいる方が多いのですが、安い方が売れるのは、こだわりがない日用品やどこにでもある型番商品など、ごく一部のジャンルに限られます。それ以外の分野では、安さはそこまで重要なファクターではなく、むしろ値段が安いと売れないという現象すら起きているのです。

たとえばギフト商品などは「安いと売れない」の筆頭といえます。ネットが発達した現代では、モノの値段は調べようと思えばいくらでも調べられます。プライベートな贈り物でもビジネス用の手土産でも、安物を贈るとすぐにばれてしまい恥をかくので、ハッタリを利かせて高めのモノを贈ろうという人が増えているのでしょう。

〝自分へのプレゼント〞として選ばれることが多いファッション小物も、高めの商品の方がよく売れる傾向にあります。それを裏付けるのが楽天市場のデータで、ギフト商品やファッション小物については、検索結果を「価格が高い順」にソートして調べる人がかなり多いことがわかっています。そういう人は「値段が高ければいいものだろう」と思っているわけで、その心理を逆手にとって値段を高くしておけば、勝手に「いいものだろう」と錯覚し買ってくれるのです。

私のクライアントでも、強気の値付けで成功した事例はいくつもあります。

たとえば、ご夫婦で経営している地方の小さな洋菓子店からコンサルの依頼をいただいたときは、1個7,500円のプリンを売り出しましょうと提案しました。その店ではふつうのプリンを1個500円くらいで売っているので、いきなり15倍の値段の新商品を出したことになります。

麻布台ヒルズあたりで売るならともかく、地方にあるごくふつうの洋菓子店が7,500円のプリンを売り出したところで誰が買うのかと、疑問に思われた方もいるでしょう。しかし7,500円のプリンはハッタリ好きの日本人の心にバッチリ刺さり、マツコ・デラックスさんの番組など複数のメディアで取り上げられたこともあって、月1,000万円弱も売れる大ヒット商品になったのです。

値付けのタイミングは、新商品を発売するときだけではありません。楽天時代に担当していた某ギフトショップは、商品の中身は一切変えずに値段だけを1.5〜2倍に上げました。かなり大胆な試みでしたが、結果どうなったかというと、値上げ後も販売数はほぼ横ばいでした。値段が1.5倍になって販売数が同じということは、売上が1.5倍になったということです。商品はもちろんサイトのデザインも一切変えず、ただ値段を変えただけで売上が1.5倍になるのですから、ハッタリの力は恐ろしいと言うほかありません。

もちろん、商品の中身も変えられるなら変えた方が「リニューアルに伴う値上げです」という体裁をとれるぶん、よりスムーズに受け入れてもらえるでしょう。ただ、日本の企業は価格を安めに設定しすぎていることが多いので、特に何も変えずに値段だけを上げてしまっても、結果オーライになることがほとんどだと思います。

高く売れば売るほど「クレーム」が少なくなるカラクリ

値上げに慎重な人の意見として「ふつうの商品を高値で売ったら、買った人から詐欺だと言われてしまう」とおっしゃる方がいます。「高いからいいものだろう」と錯覚して買ったものの、実際に使ってみたら錯覚が解けて「値段のわりに大したことがない」とクレームになることを恐れているのです。

しかし実際には、高い商品ほどクレームは少なくなります。なぜなら人は買うときだけではなく使うときも「高いお金を出して買ったのだから、いいものに違いない」と自分に暗示をかけ、自分を納得させようとするからです。

たとえばビジネスパーソン向けのセミナーは、1日5,000円で受講できるものもあれば、1週間で50万円、100万円の値段が付くものもあります。もちろん内容は全然違うけれど、100万円のセミナーは5,000円のセミナーの200倍タメになるかといえば、そうでもありません。100万円でも退屈なセミナーはあるし、5,000円でも有益な情報を学べるセミナーはあります。

ところがセミナー後にアンケートを取ると、例外なく高額セミナーの方が参加者の満足度が高くなります。なぜかというと、人は「100万円も払ったのに全然勉強にならなかった」とは思いたくないからです。たとえ内容がスカスカでも「これはこれでよかった。100万円分の価値はあった」と、自分で勝手にコストを回収しに走るのです。

モノやサービスに値段を付けるときは、この「人はこう思いたがる」という心理をふまえた値付けをしてください。たとえありきたりな商品でも堂々と高値を付ければ、消費者は勝手に「いいものだろう」と錯覚し、買うときだけではなく使った後も「いいものだった」と満足してくれることでしょう。

『ハッタリの作法』より引用
大原昌人(おおはら・まさと)
元「楽天市場」プロデューサー/株式会社ダニエルズアーク代表取締役

慶應義塾大学環境情報学部卒業。楽天市場全体のビジュアルを統括するWebプロデューサー・ディレクターとして、数々のヒット企画に参画する。2016年4月、熊本地震発生直後に4万4000人を巻き込む一大プロジェクト「買って応援企画」を達成し、同年「楽天市場 MVP 賞」を受賞。2017年からは、国内最大級の流通額を誇る「楽天スーパーSALE」の総合プロデューサーに当時最年少で就任。4万8000店舗の統括を行いながら、流通総額600億円強の売上最高記録を生み出した。
2018年、株式会社ダニエルズアークを設立し、代表に就任。コカ・コーラ、サムスン、花王など、大企業からの引き合いが絶えず、YouTube・TikTokプロデュース事業では、コンサルティング実績200チャンネル以上。累計391万チャンネル登録を超えるYouTube・TikTokチャンネルのプロデュースに関わっている。
2023年にリリースした高級アイスクリーム自社ブランド「Cellato」では「世界で最も高額なアイスクリーム」としてギネス世界記録を取得し、世界中のテレビ・新聞・ラジオ等で反響を呼んでいる。
著書に『4000万人の購買データからわかった! 売れない時代にすぐ売る技術』(サンマーク出版)『すべての仕事を2分の1の時間で終わらせる ガチ速仕事術』(ぱる出版)『これからの集客はYouTubeが9割』(青春出版社)など多数。

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