◉日本不動産の注意点
日本ではサービスアパートメントとして展開している月の家賃が200万円くらいする物件も、こちらでは5億以上は優に超える物件として販売しているケースを見ます。
こっちで出ている物件を、よくよく日本語のサイトで確認ならびに業界の友人などに聞いてみると、麻布とはいえども繁華街に近くそれほど治安が良くないエリアで売れ行きが芳しくないといった意見が散見されたのには注意が必要かもしれません。
1億~2億円程度の物件であればこちらの投資家は物件を実際に見もせずに買うということが起こるのかもしれませんし、また業者としてはそれに期待する部分も少なからずあるのでしょう。
また、地理的に非常に近く、文化的な距離も比較的近いと言える台湾からは、日本の不動産を買うツアーなどが今年に入ってから盛んに開かれているということです。台湾の銀行が円での貸し出しもパッケージ化して扱っているらしく、彼らは台湾に持っている不動産を担保に金利2%くらいでローンを引っ張ってきて、都内に限らず郊外の少し利回りが高めな7〜8%くらいで回る物件(駅近くのコンビニをテナントとして入れている物件の区分所有が人気)を好む傾向があるということ台湾のバンカーは話していました。
ここで問題になるのは日本の税金の高さです。
1億程度の物件であれば個人所有だとしても(他に日本での所得がないと仮定すれば)累進課税が適用されるだけで40%というような税率は適用されないでしょう。しかし、当然10億円以上の物件になると節税目的の会社を設立して20%程にまで課税率を引き下げることを考えなければいけません。そのための設立、維持コストを勘案し、その他にも円の借り入れコスト、修繕費などを考慮し出すと実は5%程度の利回りでは殆どキャッシュフローベースで手元にお金を残すのは難しくなってしまいます。
となると、簡単に削れるコストは、リッチな投資家だと仮定すると借り入れに頼らずに為替リスクを取って投資のキャッシュ比率をあげることでしょう。
しかし、ここ数ヶ月の日本円の減価ぶりを見せつけられると誰が少しでも確信を持って日本円への投資自体を外国人投資家に勧めることができるでしょうか。残念ながら私はその一人では有りません。聞くところによると日本の中小企業も余剰資金を使って10億円サイズの物件を物色し出しているという極めてバブルのようなサインも見えはじめており魅力的なマーケットではあるのですが実際の投資となると大きいサイズの物件になるとかなりハードルは高そうだという印象を持っています。
REITの利回りも優に5%を下回りだしている現状を考えると、一番美味しい時期は当に過ぎていてなんとか10-20%くらいの値上がりがあればラッキーかな?というスタンスをとるべきかもしれません。
◉シンガポールの不動産
翻って私が住んでいるシンガポールの不動産は驚くべきことに(値下がりすると思って買うタイミングをうかがっている私の主観も入っていますが)非常に堅調です。度重なる政府のバブル抑止策にも関わらず、上でも述べましたが運用利回り2.5%という借り入れコストを少し上回るだけの水準を維持していると言えます。
しかしながら、いわゆる超ハイエンド(5億円くらい)の物件はもちろんのこと全体的な取引件数はかなり少なくなっていると言えるでしょう。
2-3億くらいの物件についての潜在的な買い手はたくさんいるものの、総じてマーケットが高すぎるのでいずれは下がってくるだろうと思っており、全くもって急いで買う状況ではないと思っております。また、レバレッジを効かせて買っている投資家でさえ、損を出してまで又は少しの利益では売る理由が見当たらないというのが現状であると言えます。
その一番の要因としては、お分かりだとは思いますが借り入れコストが非常に低い(当初2年間は0.9%くらいの金利です)ため売主も慌てる理由がありません。
個人的には直近までマーケットを賑わしていた1戸5億くらいする物件を20件くらいまとめ買いするような中国人投資家は現状の本土における政治的な背景からも新たに容易に現れるとは思えます。選挙が終わったばかりのマレーシアからのグレーマネーも期待できないでしょうし、これまで超高給を得ていたインベストメントバンカー達は最早不動産の買い手ではなく売り手になっているかもしれません。
何が申し上げたいかというと、一概には言えないものの超高級不動産を新たに買うことができる投資家はそれほどいないのではないかと勝手に思っています。一つ見落としていることがあるとすれば、富裕層への税金が今後も上がり続けそうなEU、USからの富裕層がどれほどマーケットを支えられるかでしょうか。
このシンガポール不動産の今後ついては非常に興味深いことに海千山千な私のお客様の意見も真二つに割れているほど判断に苦しむマーケットであると言えるかもしれません。
少しアングルを変えて見てみましょう。
シンガポールに派遣されている日本人社員の平均家賃の相場が4000-6000ドル(ざっと30万から50万円です)くらいでしょう。商社勤務の方々がもう少し高く60万円くらい、一番高いと言われているのが某金融機関や日本大使館の方達で80から100万円くらいだという話を不動産会社の人から聞きました。
派遣社員にこの一番高い家賃のレンジを払うことができる外資系の会社の例としてゴールドマンサックスの名前があげられていましたが、それほど羽振りの良い会社は例外と言っても過言ではないでしょう。その一方、ドイツで一番大きな保険会社の役員候補の友人が、家賃5000ドルくらいのコンドに住んでいたことを考えると、一番堅実な投資対象として考えられるのは、その辺りの家賃から逆算して考えられるシンガポールドル(SGD)で250万ドル(日本円で丁度2億円)くらいの物件ではないかと個人的には思っております。
非常に悩ましい現状ではありますが、運用対象の少ないシンガポールドルベースの投資家からすると、常に大きなウエイトを占めるテーマですので、定期的にご報告させていただきますね。
ではまた。
BY N.S
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