◉さらに有利な経営承継円滑化法による納税猶予制度
この相続時精算課税制度よりも更に有利な制度が経営承継円滑化法による納税猶予制度です。
納税猶予制度は、企業の事業承継のために贈与を行った場合に適用される制度で、一括して株式の贈与を受けた場合に一定の厳しい要件を満たした場合には納税が免除される制度をいいます。一定の厳しい要件については、細く規定されていますが、要点は「企業の事業承継のために株式を贈与した」と認められることです。
例として要件をいくつか挙げますと、例えば、株式の贈与者は会社の代表者であったこと、役員を退任すること、株式の贈与を受けた者が20歳以上で役員に就任してから3年を過ぎていること、受贈者が筆頭株主であることなどが要件となっています。これらは、いずれも企業の事業承継を行うために株式の贈与が行われたと認められる状況を設定しているものです。
このように、企業の事業承継のための株式の贈与においては、非常に有利な納税猶予制度が設けられています。
◉まとめ
このように企業の事業承継手続きにおいては、税金の負担が大きな問題となります。
そもそも企業の事業承継は経済産業省や中小企業庁が中心となり、日本の企業を次世代に残すための社会的意義が大きい取り組みです。この中で、まじめに企業の事業承継を実施しようとする際に税金の負担という問題が壁となるのは、ある種の矛盾があるとも言えます。
そのため、税負担については、軽減するために様々な制度が模索され、制定されていますが税務当局との意見の一致が難しいためか、制度設計がまだまだ未発達であったり、一貫性がない制度となっているなど様々な問題があります。
税負担については、これからさらにわかりやすく使いやすい制度の発足を期待しつつ、現時点では納税猶予制度、その適用が難しい場合には相続時精算課税制度の活用により可能な限り負担を軽くして、円滑な企業の事業承継が実施されることを願う次第です。
また、税負担の問題について相談することができる専門家はもちろん税理士です。ただ、税理士の中にも企業の事業承継についてはあまりタッチしていない方もいます。その場合には、最寄りの商工会議所・中小企業庁の出先機関などに事業承継のための贈与税の負担について相談することがおすすめできます。
S.K(行政書士)
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