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こんにちは、企業の事業承継に取り組む行政書士のS.Kです。
毎週木曜日にオーナー企業のための事業承継を連載しております。

今回は事業承継に伴う税負担のうち、贈与税の問題についてまとめていきたいと思います。

【参考 オーナー企業のための事業承継】

オーナー企業のための事業承継vol1「事業承継の必要性と円滑化のための法制度とは?」
オーナー企業のための事業承継vol2「後継者選びのポイントとは?」
オーナー企業のための事業承継vol3「後継者選びのポイントは?その2」
オーナー企業のための事業承継vol4「建設業界に学ぶ許認可事業の事業承継って?」
オーナー企業のための事業承継vol5「会社の現状を把握するポイントとは?」
オーナー企業のための事業承継vol6「企業の事業承継の際の法律上の問題点とは?
オーナー企業のための事業承継vol7「家族の絆を守る後継者以外への配慮とは?」
オーナー企業のための事業承継vol8「後継者の適性・選定のポイント」
オーナー企業のための事業承継vol9「種類株式を使った事業承継?」


◉事業承継において贈与税が問題となる理由


まず、企業の事業承継手続きにおいて、なぜ贈与税の負担が生じるのかという点について述べていきたいと思います。

企業の事業承継手続きを進めるにあたっては、どこかの時点で株式を事業の後継者に集中させる必要があります。言うまでもなく、株式会社においては、出資者である株主が株主総会の発言権(例えば、役員の選任・解任の権限)を持ち会社の経営権を把握することとなります。そのため、企業の事業承継において後継者が経営権を把握するためには、いずれかの時点で株式を後継者に集中させることが必要となります。

そして、この株式集中化の際に、株式を後継者に贈与するという方法を取ることができます(もちろん、有償の譲渡でも全く問題はありませんが後継者の経済的負担を考え贈与するというケースが多くあります。例えば、親から子への株式移転の場合には贈与による場合が多いようです)。
しかし、贈与をすると当然、贈与税の負担の可能性が生じます。

このように企業の事業承継の際には株式を贈与等により後継者に移転させなければならないものの、株式移転の際には贈与税がかかってしまうということが問題の出発点となっています。なお、有償で譲渡した場合には所得税、相続による場合には相続税がかかり、いずれにしても税負担の問題は生じることとなります。


◉暦年課税制度と相続時精算課税


贈与があった場合の贈与税の計算方法としては、一般的には暦年課税制度と相続時精算課税制度のいずれかを選択します

前者の暦年課税制度というのは、1月1日から12月31日までの贈与額を合計して、贈与税を課税するというものです。暦年課税制度で申告した場合には、贈与額が110万円を超えると、110万円を超えた部分については最大50%の税金がかかります。このため、株式という高額な財産の贈与の場合には、莫大な税負担が生じる可能性があるので、暦年課税制度による贈与税の納付はあまりお勧めできない方法であるといえます。
ただし、何年にも分けて少しずつ株式を贈与するという方法で課税される額を少なくするなどの方法は考えられます(もちろん、節税方法として適法です)。長期的に企業の事業承継をすすめる場合には、暦年課税制度によって株式を集中させることも可能と言えます。

一方で、後者の相続時精算課税制度は、将来の相続時に贈与の税金を清算するというような制度であり、2500万円までが非課税であり、2500万円を超えた部分について一律20%の税金がかかることとなります。
この両者を比較した場合には、一般的には相続時精算課税制度を利用したほうが節税になります。