こんにちは、企業の事業承継に取り組む行政書士のS.Kです。
毎週木曜日に「オーナー企業のための事業承継」シリーズを連載しております。
6回目の今回は、企業の事業承継における法律上の問題点をまとめていきたいと思います。企業の事業承継における法律上の問題点を把握されることは、相続対策としても役立ちますのでご参照いただけましたら幸いです。
【参考 オーナー企業のための事業承継】
オーナー企業のための事業承継vol1「事業承継の必要性と円滑化のための法制度とは?」
オーナー企業のための事業承継vol2「後継者選びのポイントとは?」
オーナー企業のための事業承継vol3「後継者選びのポイントは?その2」
オーナー企業のための事業承継vol4「建設業界に学ぶ許認可事業の事業承継って?」
オーナー企業のための事業承継vol5「会社の現状を把握するポイントとは?」
【参考】
相続・承継でお悩みの方必見!大事な家族へ財産を残すための保険の活用法
閉じ込められる個人金融資産1500兆円
「オーナー経営者がこぞって企む相続税節税の㊙テクニック」
◉事業承継における法律上の問題点を把握していくことの意味
企業の事業承継にあたっては、後継者候補者の選定が最も重要な課題の1つとなります。企業を次の世代へ承継させるにあたって、会社を率いるリーダーを誰とするかが会社の更なる発展にとって、また、これまで経営者様が作り上げてこられた企業の伝統を承継するにあたって、非常に重要なポイントとなることは容易にご想像いただけることと存じます。
ただ、会社・企業というものは、経済の発展のために人間が考え出した一つの技術的な制度ですので、事業承継にあたっては制度的な問題も非常に多く絡んできます。そして、この企業や会社という制度は法律によって様々な規制を受けています。
そこで、企業の事業承継を考えるにあたっては、どうしても法律上の様々な制度を理解・活用することが必要です。もちろん細かい箇所に関しては、私たち行政書士や税理士などの専門家が処理する問題ですが、法律制度の概要は是非とも経営者様にご理解いただくことにより、円滑な事業承継手続きを進めることができるようになります。
◉相続財産の把握について
企業の事業承継においては、将来、遺産となる資産の範囲(相続財産の範囲)をしっかりと把握されることが重要となります。遺産は現在の法律制度では、相続人に公平に配分されるのが民法の原則ですが、この民法の原則にそのまま従ってしまうと、企業の事業承継の際には差し障りが生じることとなります。例えば、事業承継にあたっては経営者様保有の株式を後継者の方に集中させる必要がありますが、民法の原則のままでは株式が細分化してしまい、収拾がつかなくなるおそれがあります。
その他、事業用資産についても経営者様名義では、やはり後継者と相続人の方の間でトラブルが生じる可能性があります。
株式を中心とした遺産を事業承継がスムーズに進むように後継者の方に集中させるためには、遺言書や経営承継円滑化法の利用が考えられますが、その前提として、まずは遺産の範囲を確定させることが必要となります。遺産については経営者様におかれましては目録を作成していただき、それぞれについて必要な法律手続きを取ることとなります。
そのため、企業の事業承継においては遺産の範囲をはっきりさせることが大切となります。