内視鏡

次の日本経済の成長エンジンと目される医療関連産業。日本政府の成長戦略では柱に据えられ期待がかかる中で、がぜん注目を集めるのは、内視鏡の世界市場で70%と圧倒的なシェアを誇るオリンパス <7733> だ。医療機器の規制緩和も進むが、世界に目を向ければまだまだ厳しい状況にあり、これからが同社にとっても正念場だ。官民一体で臨む医療機器製造業が成長の原動力になれるか今後、問わることになりそうだ。

日本経済の現在の牽引役といえば、トヨタ自動車 <7203> がリードする自動車産業。今や押しもおされもせぬ日本経済の牽引役ながら、かつては、官民一体となり国際競争力の強化に努めた。その様は、躍起になって医療分野の競争力強化を図っている現在の政府の姿とも重なる。実際に、自由診療など大きな医療規制改革と併せて、医療機器の承認審査の迅速化などの支援策の提供が開始されているからだ。

日系医療機器製造大手の1社であるオリンパスにとっても、もちろん追い風が吹いている格好だ。


次の内視鏡”の開発進めるオリンパスの医療事業

同社自身も医療事業を着々と展開させており、その一つが経営の効率化だ。2014年末には、オリンパス本体と医療事業を担っていたオリンパスメディカルシステムズなどの間で、組織再編を実施。外国での医療機器への法規制へ対応や、医療機器の製造・販売をオリンパス本体で管理する体制へ移行した。

加えて、同社内でも製品開発がさらに進められており、内視鏡に続くヒット製品を模索する。外科分野の新製品として投入したサンダービートの展開をさらなる加速を図るなど、製品ラインナップ面の強化も図っている。ほかにも、2013年4月にソニー <6758> と合弁で設立したソニー・オリンパスメディカルソリューションズが開発を進める4K解像度技術、3D機能を持つ外科用内視鏡の開発が実を結ぶかも焦点の一つだ。

同社の医療事業は業績面でも好調そのもの。医療事業単体での実績では、2012年3月期の売り上げが3492億円だったところ、’13年3月期には3947億円と2桁以上の伸びを見せた。さらに、’14年3月期には売上高が4923億円となり、不安定な経済環境が続く中でも着実に成長してきた経緯がある。利益に焦点を移しても、’12年3月期で682億円、’13年3月期で871億円、’14年3月期で1127億円と着実に増加させており、いよいよ期待も膨らみそうだ。


海外医療機器市場ではまだまだ小規模なオリンパス

しかし、海外市場に目を向ければ、同社にとっての課題も多い。端的な例が事業規模で、売り上げを単純に比較すれば、それがよくわかる。

例えば、厚生労働省が公表した医療機器産業ビジョンの参考資料では、医療機器メーカーの売上高上位ランキングが紹介。2000年時点では、ジョンソン・エンド・ジョンソンが1兆1390億円で世界最大となり、その後に、バクスター・インターナショナルの7331億円と続く。さらに、アボット・ラボラトリーズの売り上げが6023億円、メドトロニックが5762億円の規模を示した。

他方で、日系医療機器メーカーはというと、東芝が2400億円、オリンパス光学工業が1956億円と2位となっている。

日系メーカー1位の東芝とジョンソンアンドジョンソンを比べると、世界第1位の医療機器メーカーの規模は日系メーカートップの実に4倍以上。まだまだ世界の強豪医療機器メーカーに比べると、小規模だと言える。

ただ、オリンパスの内視鏡のように小さな市場で圧倒的な実績を示している例もあり、望みが全くないわけではない。こうした強みを発揮している分野を梃子に、より大きなシェアを獲得できるか。次代の日本経済の成長エンジンの役割を担えるのか、我慢強く見守る必要がありそうだ。

(政治経済ジャーナリスト 上杉学)

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