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円安に苦しむ企業の倒産が急増している。帝国データバンクによると、2014年の円安関連の倒産件数(負債1,000万円以上)は前年比2.7倍の345件に増加した。業種別では運輸業が全体の34.9%、166件でトップ。また負債額ベースでは、全体の75%強が負債5億円未満の中小企業が占めた。

また同年12月の円安倒産は44件に上り、月間での最多件数となった。


円安、中小零細は価格転嫁できず

2015年、安倍晋三首相は年頭所感で「今年も、経済最優先で政権運営にあたり、景気回復の暖かい風を、全国津々浦々にお届けしてまいります」と抱負を語った。昨年末の総選挙で自公が圧勝し、アベノミクスが信任を受けた形だが、政府の経済政策や、日銀の追加の金融緩和により円安が進行。大企業の製造業などを中心に、円安効果で業績は大きく改善した。

一方、円安による原材料価格の高騰を受け、食料品を中心に大企業は次々と商品の値上げに踏み切った。しかし、価格転嫁できない中小・零細企業は、綱渡りの経営を迫られており、円安がさらなる追い打ちをかける。

東京商工リサーチが実施した円安に関するアンケートによると、円安の影響があると回答した企業は76%に上った。このうち、約半数の48.4%の企業がマイナスの影響を受けると答えた一方、プラスの効果を得られるのは4.9%にとどまった。

円安の悪影響として仕入れ価格の上昇を懸念する声が大半を占めたが、価格転嫁できた企業はわずか19.2%。価格転嫁できていない企業が80.8%に達し、自社で負担している企業が圧倒的に多いことが浮き彫りになった。

こうした状況の中、円安に対する政策に関しては、有効回答を寄せた全国4,896社のうち、最多の593社が「特になし」「期待しない・出来ない」とし、政府の経済対策に失望感を漂わせている。


さらなる円安進行、1ドル=130円台に突入か

2014年12月、ドル円相場は7年4カ月ぶりに1ドル=121円台に突入。足元の為替相場は、原油価格の急落やギリシャ情勢への懸念から、円安の進行は小康を保っている。しかし、2015年はアメリカで、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げに踏み切るとみられる。

一方、国内では日銀の金融緩和により金利の低下が進行。1月に入り、長期金利の指標となる10年物国債の流通利回りが過去最低水準を更新し、0.1%台に突入した。日米の金融政策の相違から金利差が拡大し、一段の円安が進み、1ドル=130円台の水準に到達するとの観測も出ている。

昨年10月末の日銀による追加の金融緩和後、急速に進んだ円安の企業収益への影響はこれから顕在化するとみられ、帝国データバンクは「中小・零細企業にとって2015年はまさに正念場となる。今後、引き続き円安関連倒産が増加基調をたどるなか、全体の倒産件数も緩やかに増加に転じる可能性がある」と、指摘している。

(ZUU online)

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