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昨年12月のFOMCで少なくとも今年6月以降には実施が予想されることとなっている米国の利上げだが、直近のディスインフレ状態とインフレ率押し上げの原動力となるはずの賃金の増加がはかられていないことから、一転して先送りの議論も登場しはじめている。


ギリシャ・イタリアは既に完全にデフレ状態

欧州各国は本格的にデフレに直面しつつあり、CPIのデータなどを見るとギリシャとイタリアはデフレに突入している可能性が高まっている。欧州各国は日本と同様にCPIにエネルギー価格を含んでいるため昨今の原油価格の下落がデフレに拍車をかける状態になっていることは間違いなく、周辺国にも波及するのは時間の問題と見られている。これでドイツやフランスまで同様の状況に陥ればQEの実施は必須の状況となることは間違いない。


日本もCPIがマイナスになるリスクに直面

日銀もエネルギーコストを入れた形のCPIを判断要素にしているが、11月で2.7%、食料品とエネルギーを抜いた数値は2.1%となっており、消費増税分の上昇2%を差し引くとエネルギーを入れて0.7%、抜いた形では0.1%であり、年明け3月ごろにはマイナスへと再度転落の危機に直面している。こうしたことから日銀もさらなる量的金融緩和により早く踏み切ることが予想されはじめている。


グローバルエコノミクス環境下で米国だけがインフレ実現はありえない状況

世界市場はすでにひとつのマーケットとして捉えられるようなっており、どれだけ景気が好調とはいえ、米国だけが他の先進国が軒並みデフレ状態に陥る中にあってひとり2%近くのインフレターゲットをこなす形で成長するのはかなりむずかしくなっている。したがって、FRBの当初予定通りに今年6月や7月といったタイミングに予定通り利上げを行うことになるかどうかはまだまだ微妙な状況といわざるを得ない。

また、ドル高が米国の輸出系企業の収益を圧迫し始めているのもまた事実であり、これが企業決算に影響を及ぼすことになれば、利上げの阻害要因として働く可能性がある。


共和党からのプレッシャー

前回の中間選挙で圧勝した共和党からは一刻も早く政策金利を正常化すべきであるとの強いプレッシャーをFRBが受けることは間違いなく、イエレン議長としては共和党に対する配慮も考えざるを得ない状況に追い込まれているといわれる。したがって従来よりもかなり低いレートで社会的な影響を最小限にとどめながら利上げという既成事実をなんとか残していく可能性も否定はできない。


今後向こう数ヶ月のCPIと雇用統計の結果待ち

こうしたことから、どうやら今年早い時期に利上げが行われるといったほどFRBがおかれている状況も単純ではなくなっている。仮に春先までのCPIと雇用統計数字が芳しくなければ利上げ実施時期が後ずれする可能性も残されてきているのが現在の状況といえる。またECBの状況などもFRBの決定に影響を及ぼす可能性が出てきているといえる。


原油価格下落のネガティブインパクトが噴出すれば完全先送りも

そして何より危惧されているのが原油価格下落にともなう二次的な問題の発生である。直接的な原油価格の下落はガソリンをはじめとするエネルギーの小売価格にもリフレクトしてくるため、個人ベースでは可処分所得を増やす効果も期待されているが、その一方で、零細な企業が多いといわれるシェールガスの事業会社は既に倒産するところも出てきており、レイオフも問題になろうとしている。なにより、シェールガス業者の破綻や行き詰まりにより、ジャンク債市場ですでに18%を占めるといわれるエネルギー系のジャンク債がデフォルトに陥る可能性も指摘されはじめており、流れ次第では第二のサブプライムローンイシューにもなりかねないリスクが高まっている。

こうした状況を背景にして、まだここ数ヶ月は利上げの可否についてFRBメンバーを中心に活発な議論が展開されてくることになるのはほぼ間違いない。4月までに見通しが立たなければ大幅な先送りも考えられる。

(ZUU online)

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