PKOと2頭のクジラとHFT

日銀は金融緩和策の一環として、2010年12月から指数連動型上場投資信託(ETF)を買い入れている。かつては、「前場引けの段階でTOPIX指数が前日比1%以上下落していれば、後場から日銀のETF買いが入る。」と市場関係者の間で語られてきた。株価PKOと呼ばれる株価維持政策だ。

株価が下がればPKO。ところが、今ではそればかりでは無い。巨額の公的マネーを運用する「クジラ」が市場の流れを一変させることがある。GPIFと、かんぽ生命だ。上場を控え、かんぽ生命は運用収益を増やすために株の比率を一段と上げようとしているという臆測が市場関係者にある。個人投資家は巨大な2頭のクジラの一挙手一投足に振り回されることになる。彼らの売買で市場が上下に大きく動くのだ。

そして、コンピューターを駆使した超高速取(HFT)が市場に不気味な存在感をもたらしている。HFTは大規模なコンピュータシステムを使って価格や注文情報をいち早く取引に生かせるため、一般の投資家に先んじて機敏に売買できる。超短期取引を繰り返して小幅な利益を積み上げる「薄利多売」型の投資手法で、米国株ではHFTの売買が全体の5割程度にのぼると言われている。

日本では東証の取引システムのそばに設置したサーバーから注文を出すコロケーションサービスがそれにあたる。すでに売買代金の4割超、注文件数で6割超がコロケーション経由での発注とされており、すでに東証のかなりの部分がHFTの注文であることは疑う余地がない。


最大のリスクは米国経済の好調

上昇を続ける現在の相場に弱点は無いのか。皮肉にもそれは好調な米国経済かもしれない。米労働省が6日発表した2月の米雇用統計では、非農業部門の雇用者数が市場予想を大きく上回ったほか、失業率も低下した。市場では米雇用環境の改善を受けて、米連邦準備理事会(FRB)が利上げに動きやすくなったとの観測が広がった。その結果、長期金利が大きく上昇し、米株式市場でダウ工業株30種平均は大幅反落した。

ここから13年5月の相場を思い起こす人もが多いはずだ。バーナンキFRB議長の議会証言を受け、株高を支えてきた量的緩和策の縮小観測が市場で浮上。米国で金利が急上昇し、世界中のマーケットに激震が走った。再び同じことが繰り返されないという保証はない。


日経平均株価2万円が持つ意味

PKOが株価を買い支える。巨大なクジラが株価を押し上げる。HFTが利益をかっさらっていく。これでは個人投資家が腰を据えて株式投資を行うことなど出来そうに無い。外国人投資家の買いが途切れれば、株価は下落に転じるのでは無いかという不安から逃れることはできない。その不安を尻目に株価は連日上昇を続けている。

今の相場はPKOと公的マネーによって演出された官製相場であること。そしてHFTが先回りして個人投資家の利益をかっさらっていくことを多くの投資家が見抜いている。多くの投資家は日経平均2万円という数字に価値を見出せないでいるのではないか。むしろ、多くの投資家が注目しているのは「官製相場の賞味期限」では無いだろうか。(ZUU online 編集部)

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