◉経営承継円滑化法による貸付制度


平成20年より施行されている経営承継円滑化法は事業承継を促進させるための法律ですので、この法律による企業の事業承継時の融資制度も用意されています。
具体的には以下の2つの制度が経営承継円滑化法の手続きを踏むことで利用することが可能となります。

(1)中小企業信用保険による保険枠の拡大

中小企業信用保険制度は、信用保証協会が加入している保険制度です。
ご存知の方も多いかと思いますが、保証協会付き融資を受けた企業が、金融機関に対して返済ができなくなってしまった場合には、金融機関に対しては保証協会が企業に代わって借入金を返済することとなります。そして、保証協会は、信用保険制度を利用して保証リスクを保険金からまかなうこととなります。

この保険枠について、普通保険が2億円、無担保保険が8000万円、特別小口保険が1250万円別枠で設けられることとなりました。(経営承継円滑化法第13条)つまり、保険枠が別枠で設けられたことにより、保証協会は別枠で貸付の枠を設けることができますので、仮にこれまで保証協会に利用可能枠限度まで保証をしてもらっていたとしても、事業承継時の運転資金・設備資金であれば、別枠で貸付を受けることが可能となることとなります。

この制度の利用については先に述べましたように経営承継円滑化法の手続きを経ることが必要です。手続きに関しては、個人的に相談されるのであれば、事業承継手続きに詳しい経営コンサルタント、行政書士、弁護士などに相談することとなりますし、商工会議所などの準公的機関に紹介を依頼することも可能です。

(2)日本政策金融公庫・沖縄振興開発金融公庫の融資制度

日本政策金融公庫(旧国民政策金融公庫・国金)や沖縄振興開発金融公庫では経営承継円滑化法により、代表者(後継者)個人が企業の事業承継のために必要な資金を借り入れることが可能となる制度が発足しました(経営承継円滑化法第14条)。

この制度の利用の場合にも法的な手続きが必要となるので、具体的な手続きは上記のような専門家へ相談されるか、中小企業庁作成の「中小企業経営承継円滑化法申請マニュアル」をご参照いただくこととなります。

日本政策金融公庫等ではこれまで代表者個人に対しての貸付は行っていませんでしたので、この制度は画期的なものということができると言えます。これらの制度を利用して企業の事業承継に当たっての必要な運転資金など、後継者による経営が安定するまでのつなぎ資金を調達することが可能です。

企業の事業承継にあたって、承継当初から負債を負うことに抵抗をお感じになる方もおられるかもしれません。
しかし、経営にあたってある程度の負債を負うことは、一種の覚悟の表れであり、あえて借り入れをさせる状況で事業承継を実施することが後継者としての活動を奮起させることになることもありえます。

なにより企業の事業承継を実施した後に資金が回らなくなってしまっては元も子もありません。これらの金融制度は公的なものですので、利息も少なく長期的に事業を継続するためには有益な借入先ということができます。企業の事業承継にあたり金融制度の利用も1つの方法として視野に入れられることもおすすめできます。

BY S.K

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