年金基金
(写真=Thinkstock/Getty Images)

デフレ完全脱却にむかう現在の景気回復の推進力は、景気中立的な水準より拡大している財政支出(第一の矢)、日銀の大規模な金融緩和による間接的なファイナンス(第二の矢)、そして海外経済の回復をともなった円安にあると考えられる。

この推進力に加え、成長戦略による構造改革・税制改革・規制緩和(第三の矢)が企業を刺激し、企業活動の回復の力(企業貯蓄率の低下)を使ってデフレを完全脱却するのがアベノミクスの本質である。

景気中立的な水準より拡大している財政支出にも三本の矢が存在する。この三本の矢、特に三つ目が、景気回復の推進力として忘れられていると考える。消費税率引き上げなどの財政緊縮は、景気回復の推進力となっているこれらの力を削ぐことになってしまう。

前編での二つの矢に続き、後編では三つ目の矢を解説する。

もっとも意外な三つ目の矢は、年金基金の取り崩しが始まり、社会保障費としての財政支出の拡大となり、それが有効需要(社会保障を受け取った人の支出)となり、現役世代の所得を増加させていることだ。

ここ数年、年金財源を補充するため、年金基金の取り崩しが年5兆円程度ある。

これまでは、高齢化比率が上昇しているにもかかわらず、年金基金が積み上げられ続け、過剰貯蓄がデフレ圧力として現役世代の負担を過度にしてきたと考えられる。

年金基金の取り崩しは、この過剰貯蓄から一転して、貯蓄から需要への変化になっていることを意味し、内需の回復を支えている可能性がある。

本来は年金基金は存在するだけで安心材料になるはずであり、それが取り崩されるということは現役世代の所得を増加させ、デフレ圧力が和らぐことになる。

それが誤解により、取り崩しが始まっただけで財政に対する過度な不安感を抱き、消費税率引き上げや現役世代の社会保障負担増加につながってしまえば、デフレ完全脱却の力を削いでしまうことになる。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

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