●2014年日本経済の注目業界③「スーパー業界」
上記のように「駆け込み需要」と「外国人客の増加」というポジティブ要因が予想される百貨店業界に対し、スーパー業界は2014年も苦戦が続きそうです。洋泉社は、現在アベノミクスを背景に、高額商品の販売好調が注目を集めているものの、税金や社会保険料の負担増により多くの世帯で可処分所得が減少傾向にあるため、大半の消費者の節約志向が依然強いとした上で、消費税増税がさらに厳しい状況に拍車をかけるのではないかと危惧しています。日経BP社も、食品をメインに扱う食品スーパーは地域密着で消費者の支持を受けていることから安定した収益を上げているものの、食品・日用品・衣料品など生活関連用品を一手に扱う総合スーパーは、日用品や衣料品の分野で100円ショップやユニクロなどの専門店との競争激化で劣勢にある、と述べています。
2014年はこれらの厳しい消費環境を受け、スーパー大手各社が様々な業績改善のための策を講じていく1年になりそうです。イオンは手ごろな消費価格のプライベートブランド商品の一層の強化を進めており、倹約志向の消費者に対して格安商品によるアピールを積極化しています。西友も「毎日低価格」を方針として、親会社である米ウォルマートストアーズのグローバルな商品調達力を生かして、輸入製品の品ぞろえを強化しています。セブン&アイ傘下のイトーヨーカ堂も付加価値を高めたプライベートブランドに注力し、衣料メーカーなどへの対抗を図っています。また他業種との融合や業界転換の試みも見られていくと予想されています。
日経BP社は「海外の進出の活発化」にも触れています。特に大手のイオンやマルエツは東南アジアなどの新興国への出店が相次ぐと予想されており、今後も各社の進出の動向に注目していく必要があります。
●2014年日本経済の注目業界④「食品業界」
洋泉社は「増税による原価の上昇分をそのまま価格転嫁出来るかどうかの不透明感」、日経BP社は「業界再編の動きの再加熱の可能性」にそれぞれ着目しています。
まず前者については、2013年は原料価格の上昇を背景に食品の値上げが相次いだことと、消費の緩やかな回復が重なったことで今年は好調な業績を見込む食品メーカーが多いとした上で、その収益の拡大は今後続くかどうかは定かではないとの予想を述べています。2014年4月の消費税引き上げに際して、増税分をそのまま価格転嫁できるかどうかは不透明であり、店頭価格を引き上げにくい小売と食品メーカーとの間で納入価格を巡って攻防が繰り広げられるのは確実だろうと同誌は述べています。2014年春以降は新商品の投入や内容量の変更などで値上げを図る動きが広がりそうです。原料価格の高騰が続く中で、増税分を転嫁出来なければ収益の悪化は避けられないでしょう。
また後者について。食品業界では他業界と同じく、2000年代に入ってM&Aなどによる事業統合が進み、明治HD、雪印メグミルクなどの新しい企業が生まれました。その後、リーマンショックでいったん再編の動きは沈静化したものの、アベノミクスの景気回復基調が本物となればまた業界再編の動きが活発化する可能性があります。このような再編の活発化の背景には、菓子などで国内の成長の頭打ちが顕著になる一方、中国やASEAN諸国などの成長中の市場の魅力が増していることがあります。今後はとりわけASEAN諸国の市場開拓が注目されていくとみ見られており、イスラム圏への進出の準備として食物規格のハラルを進めている国内企業も増えています。以前から日本初のグローバルメジャーを生み出す動きは活発化してきており、2014年の間に業界の構図が大きく変わる可能性もあることを念頭においておく必要がありそうです。