景気回復により、飲食店を中心に労働力不足が目立ちはじめている。時給を上げて、人材を確保する動きも広がっているようだ。完全失業率は、2015年1月時点で3.6%と非常に低い水準。このような状況のなか、パートや派遣社員などの非正規社員から正社員への流れがはじまっている。

正社員化を急ぐ企業

昨年、大手人気コーヒーチェーンの日本法人スターバックスコーヒージャパンは、契約社員全員を正社員化した。うどん等のチェーン店を展開するグルメ杵屋も、昨年夏に地域や時間を限定してパートやアルバイトを正社員へ転換する制度を導入した。東京ディズニーランドを運営するオリエンタルランドもまた、契約社員を正社員化すると発表している。

企業は正社員化を急いでいるようにも見えるが、なぜだろうか。

正社員化の背景

非正規社員を正社員化する制度を導入する企業が増加している理由のひとつは、文字通りの人材不足である。
景気回復を背景に失業率が低下しており、パートや派遣社員を募集する会社は、時給をあげてでも確保しようと躍起だ。さらに正社員に転換できるのであれば、パートや派遣社員など非正規の人にとって非常に魅力的だ。正社員になれるとアナウンスすれば、人も集めやすい。

もうひとつの理由は、ミスマッチの解消だ。会社や仕事に関して何も知らないまま入社する人より、会社の雰囲気や労働環境を十分理解している勤務経験を正社員にすればミスマッチも少なく、離職率も低くなる。会社側はこれによって不要なリスクを回避することができるのである。

そして最後の理由として、会社に対するロイヤルティ(忠誠心)が高まるというメリットもある。パートや派遣社員は、いつ雇用契約を解除されるのかという不安をつねに抱えている。しかし正社員となることで雇用の不安感は改善され、より一層会社のために頑張ろうという気持ちになる。

人口減少にともない、労働人口は今後も減少していくことが確実視されている。体力のある企業はもちろんだが、将来への投資として正社員化を急ぐ中堅中小企業も多い。働く側から見ても、正社員への道があれば働く意欲も湧いてくる。

人材をコストと考えれば、非正規社員から正社員への転換はコスト増につながると思われるかもしれない。しかし、今の時代は両親の介護や、夫婦の転勤状況、子どもの教育環境といった状況で、やむなくパートや派遣社員などを選ぶ人も多い。そのような関係で勤務時間や勤務地域を限定する「地域限定正社員」という制度を導入している企業も増えつつあり、従業員の勤務形態・給料を大きく変えることなく非正規社員を正社員化する方法も存在する。

雇用環境が激しく変化する時代にあって、これからの企業が取り組むべき課題は、多様な働き方、価値観を認め、柔軟に対応できる組織にすることだろう。その一環として、非正規から正規へという流れを整備することは、働く者だけでなく雇用者にとっても、メリットは大きいといえるのではないだろうか。(ZUU online 編集部)