2014年4月に消費税率が5%から8%に引き上げられて以来、個人消費は本格的に回復しているとは言い難く、GDPはマイナス成長で終わっている。実質賃金も回復しているとはいえず、景気回復を実感している人も少ない。

しかし急激な円安により、海外からの旅行者が急増し、旅行者相手の旅行業やホテル業や、個人向け量販店は業績が好調だ。一方で、逆に輸入業者の景況は厳しい。まさに景気はまだら模様の状況だが、ここにきてもうひとつ、大きな変動要因が現出した。原油安である。

原油価格が下落するなか、OPEC(石油輸出国機構)は減産を見送り、下落に歯止めがかからない状況が続いた。一時は高値から半値近くにまで下落し、今では50ドル前後で落ち着いたが、すぐに価格が戻る気配はない。

原油価格の下落を受け、ガソリン価格も下落した。場所によってはリッターあたり一度に20円~30円も下落している。ガソリン価格の下落は嬉しい限りだが、では中小企業にとってこの原油価格の下落にはどのような恩恵があるのだろうか。また、恩恵を享受できているのだろうか。


原油価格の下落による影響

わが国では原油はほとんど採掘できず、ほぼ100%近く輸入に頼っている。その輸入金額は、GDPのうち3%にあたる約14兆円にも達する。さらに原油だけでなく、石油製品などを加えた鉱物燃料全体では28兆円にものぼる。原油価格の下落がわが国全体に与えるメリットはきわめて大きい。

また、原油価格の下落が個人消費に与える影響も見逃せない。とくにガソリン価格の下落を受け、実質的な購買力が増加。これは個人消費の下支えになると考えられる。

企業における影響も当然無視できない。とくに石油製品や電気料金などが下がることで、電力使用量の多い工場は大きな恩恵を受ける。この恩恵を企業は賃金や設備投資に回すことが期待される。しかし国内需要の先行きが不透明なため、すぐに設備投資に回すという状況でもないようだ。設備投資はできても、新規ではなく既存設備の改修に回している企業の方が多いように見受けられる。

また、これまで海外工場に製造を依頼していた多くの企業は、今回の円安によって同コスト同品質での国内生産が可能になったため、製造拠点を再び日本に移しはじめている。このため、国内下請けメーカーの受注も増えつつある。こちらの恩恵の方が、原油下落から受けるメリットよりも大きい。


中小企業にまでなかなか恩恵が回ってこない現状

ただし、これまで述べて来たメリットや恩恵は、中小企業にはまだ広くは回っていないようだ。円安や原油価格の下落により蓄えた利益を原資として、賃金の上昇や雇用の増加、設備投資につなげてくれれば、いずれは日本全体の景気が上向くだろうが、まだ十分ではない。

今年に入って、ようやく個人消費は回復していくとみている向きが多い。賃金上昇を期待する人も増えており、厚生労働省が発表した2014年毎月勤労調査の直近の調査結果では、現金給与総額は前年比0.8%増と、増加に転じている。これは4年ぶりのことだ。

賃金も上昇し、雇用状況も改善しつつある。これらを受け消費も改善し、今年は景気も回復していくことが期待される。大企業だけでなく中小企業にも恩恵が徐々に回ってくるのは、もう少しのところだろう。

(ZUU online 編集部)

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