マタハラ,男女雇用機会均等,企業

(写真=Thinkstock/Getty Images)


マタハラによる被害

厚生労働省の「平成25年度 都道府県労働局雇用均等室での法施行状況」によると、マタハラに関連する相談は3,371件にものぼるという(婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いが2,090件、母性健康管理に関する相談が1,281件)。

マタハラとは、マタニティハラスメント(Maternity Harassment)の略で、職場において、妊娠や出産が原因で嫌がらせや不当な扱いをすること。具体的には、「出産を機に辞めたらどうだ」とか「育児休業をとるなら辞めろ」といった退職の強要、「忙しいのに休んで迷惑だ」とか「妊婦は戦力にならない」といった精神的嫌がらせなどである。
男女雇用機会均等法第9条第3項、育児・介護休業法第10条では、妊娠・出産、育児休業等を理由として不利益取扱いを行うことを禁止している。しかし、その判断は難しく、単に「能力がないから」、あるいは「出産と関係のない人事異動だ」などといわれると反論が難しかった。

そんな中、広島市の病院で妊娠を理由に降格された理学療法士の女性が、男女雇用機会均等法に違反するとして運営元に損害賠償を求める裁判を起こした。最高裁は一審、二審の判決を破棄し、2014年10月23日、「妊娠を理由にした降格は、男女雇用機会均等法に違反する」として、広島高裁に差し戻す上告審判決を下した。この判決により、妊娠を理由とした降格は、本人の合意か、業務上の必要性について特段の事情がある場合以外は、違法で無効であると判断された。

マタハラの撲滅に向けて情報発信している「マタハラNet」(正式名称:マタニティハラスメント対策ネットワーク)は、「この最高裁判決は、マタハラに悩む多くの女性、そしてこれから社会に出て働こうとする労働者にとって大きな希望となるものです」とコメント。しかし一方で、「妊娠により求められている業務ができなくなった以上降格は当然だ」、あるいは「管理職手当をもらい続けるのは虫が良すぎる」といった批判的な意見もある。

これらの状況を受けて、厚労省は「妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いに関する解釈通達について」と題する通知を全国の労働局長宛に通知した。内容は、男女雇用機会均等法違反等や雇用管理に問題があると考えられる場合には、積極的に事業主に報告を求め、助言、指導、勧告を実施するというものだ。

今後の日本経済や社会保障のあり方を左右すると言われる「少子化問題」を解決するためには、待機児童の問題と同時に、このようなマタハラ問題も解消していかなければならない。また、女性の活用が叫ばれるなか、働きやすい環境を整備することは、企業にとっても重要な課題となる。


そもそもマタハラは、労働者権利の理解不足から生じる

マタハラに対する批判的な見解として、会社にとってメリットのない人材は、降格や解雇もやむなしという考えがある。確かに経済合理性からみれば、同じ労働力であるなら安い方が良いし、病気や妊娠により労働力が低下した場合には、降格や解雇は合理的な判断だとなるのかもしれない。

しかし、労働契約は高度の信頼関係を基礎とする継続的契約であり、不可抗力によって労働力が低下したからといって、一方的に契約を解除できる性質のものではない。また職務上の地位は、会社が恩恵的に裁量として与えるものではなく、勤続年数や能力に応じて付与されるもので、一度付与された場合には一定の権利が発生し、不当に地位が奪われない利益が労働者側にはある。したがって、マタハラに対する批判的な考え方は、法の解釈を誤っており、近代社会における労働者の権利について理解が足りない。

「セクハラ」、「パワハラ」、「マタハラ」といった根の深い問題に会社が対応するためには、内外に相談窓口を設置するとともに、管理職だけでなく、全社員に向けて啓蒙活動(研修等)を行うことが大事である。嫌がらせは上司からだけとは限らず、被害にあった場合に、声をあげることの重要性を知らしめることも重要だからである。

(ZUU online 編集部)

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