ソニー<6758>の業績が底入れしつつある。しかし今後本格的に回復するかどうかは、同社が開発するイメージセンサーにかかっている。

ソニーは2月4日、2015年3月期連結営業利益(米国会計基準)予想を、400億円の赤字から200億円の黒字に上方修正した。これは記者会見を行ったソニー吉田憲一郎最高財務責任者(CFO)による「止血のための構造改革」との言葉が示すとおり、継続的なリストラの効果が現れたものだ。

決算資料によれば、エレクトロニクス関連各事業の前年度売上比は、モバイルコミュニケーション分野28.7%増、ゲーム&ネットワークサービス分野 16.8%増、イメージ・プロダクツ&ソリューション分野 1.5%増、ホームエンターテイメント&サウンド分野 2.3%増、デバイス分野 38.6%増となっている。

しかし各事業の代表的な製品の販売台数をみると、様子は少々異なる。モバイルコミュニケーション分野のスマートフォン販売台数は前年同期比11%増、ホームエンターテイメント&サウンド分野の液晶テレビの販売台数は前年同期比4%増にとどまっている。

つまりこれまでのソニーの構造改革は、製品の実売数につながっていないのだ。このことから、ソニーの業績は現れた数字ほどには回復していないと考えられる。実際、同社は決算発表の同日、モバイルコミュニケーション分野の人員を2015年度末までに2100人削減することを発表している。


中途半端だったソニーのスマートフォン戦略

ソニーはスマートフォン市場において、思うように規模を拡大することができなかった。原因は差別化の失敗である。高価格帯でも低価格帯でも、競争力を得られなかったからだ。

調査会社IDCによると、2014年におけるAndroidOS搭載スマートフォンの出荷台数は、全世界で約10億台。この10億台のなかに、ソニーをはじめ世界中のメーカーがひしめき合っている。

そのなかでもっともシェアを有しているのはSAMSUNGで約3億台。残りを、複数のメーカーが5000万台前後で追っている。

2014年に出荷されたスマートフォンのうち、成熟国市場向けは約3億台。ソニーのスマートフォンは高価格帯に属するため、主戦場はこの成熟国市場となる。しかしここには強力なライバルも多く、とてもこれまでソニーが掲げていた目標5000万台をさばくことはできない。

一方でボリュームゾーンである新興国市場向けは中価格帯から低価格帯の製品が主流となるので、ソニーのような高価格帯製品は難しい。

ソニーの吉田CFOは2014年7月の2014年4-7月期決算発表時に、スマートフォンの販売台数の目標4300万台に引き下げた。ソニーのスマートフォン戦略は、市場選択・価格設定という意味で中途半端だったのだ。

また、イメージ・プロダクツ&ソリューション分野も状況は厳しい。デジタルカメラ市場は2012年の出荷額約1兆4,000億円から2014年の約9,600億円へと急速に縮小しており、今後販売の伸びを期待するのも難しい。(一般財団法人 カメラ映像機器工業会の統計より)


イメージセンサーを中心に動き出すソニー

しかしこの状況をデバイス分野のイメージセンサーから見ると、ソニーの今後の戦略を占うことができる。決算資料によると、デバイス分野の売上は、2013年通期7,730億円から2014年通期9,500億円に拡大と予測している。実際にもデバイス分野は、ゲーム&ネットワークサービス分野とともに、実売数が伸びているのだ。

理由はここでも、世界的なスマートフォン需要の拡大がある。実はソニーは、スマートフォンに使用されるイメージセンサーCMOSにおいて、金額ベースで約31%という世界トップシェアを獲得している。

もともとソニー製CMOSはアップルのiPhoneなどに用いられていたが、スマートフォンの需要拡大で他メーカーの需要も高まってきている。スマートフォン単体では苦戦しているが、イメージセンサーはきわめて高いシェアと競争力を持っており、世界のスマートフォン需要の拡大はそのままソニーのデバイス分野に追い風となる。

また、伸び悩んでいた同社のスマートフォン「XPERIA」も、強みのイメージセンサーを活かした製品開発を進めている。新しい「XPERIA」の魅力のひとつも、ソニー製CMOSが可能にする先進のカメラ機能だ。高い競争力がある自社デバイスをテコにして、スマートフォンの高価格帯へ食い込むと同時に、デジタルカメラの代わりにスマートフォンを使うユーザーも取り込もうという意図がそこにある。

スマートフォンに加えて、イメージセンサーの需要の伸びが期待できるのが自動車だ。2月14日、日本経済新聞はソニーが自動車の自動運転技術に乗り出すと報じた。内容はソニーのイメージセンサーとロボット開発のZMPの人工知能技術を融合して、自動運転システムを開発するというものだ。同記事はまた、自動運転車は2035年に1180万台になるとも予想している。

自動運転技術はロボットのテクノロジー分野であり、大きな成長が期待されている。とくにロボットの「目」にあたるイメージセンサーと、やはりソニーお得意のその画像処理技術は、今後ますます期待が高まっていくだろう。

またイメージセンサーは、ゲーム&ネットワークサービス分野のプレイステーションにも用いられており、カメラとテレビとネットを通じたコミュニケーションが盛んになることも考えられる。

イメージセンサーは、間違いなくソニーの今後を占う上でキーになるデバイスだ。今後のソニーの新たな戦略に、大いに注目したい。

(ZUU online 編集部)

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