円相場は昨年12月、終値でついに1ドル120円を突破し、現在でも117-118円台で推移している円相場だが、昨年夏まで1ドル100円台前半で推移していたと考えると、これほど短期間のうちに急速に円安となったのは驚きだ。輸出企業が多い日本には円安は好ましいことともいわれているが、しかし企業からは「円安メリットを感じない…」という声も多く聞かれる。企業が円安メリットを感じない理由とは? 企業がとるべき円安対策とはなんだろう?


円安デメリットが大きい企業は46.2%

昨年12月帝国データバンクが実施したアンケートによると、円安による業績への影響について、46.2%の企業が「デメリットの方が大きい」と回答した。そう回答した企業は内需型の企業で、『小売』が62.2%と多く、海外工場での製造品や原材料の輸入割合が高い業種では80%以上となった。

グローバル展開する自動車や機械メーカーなどでは、円安メリットを享受できるケースが多いが、国内向けの企業にとっては円安のデメリットが大きいようだ。

とくに急速な円安は短期間でのコスト増加となるため、原材料コストを販売価格に転嫁することが難しく、利益を圧迫してしまう。円安により業績が悪化し倒産に至る『円安関連倒産』は、昨年1月〜11月で301件にのぼり、前年同期110件の2.7倍に急増した。


円安対策の状況

最近の円安に対する対策についてのアンケートでは、「特に何もしていない」が36.0%ともっとも高く、「燃料費等の節約」26.6%、「人件費の抑制」10.8%と続く。

原油の輸入が多い日本にとっては、幸いにして原油価格の下落により、円安によるコスト高が相殺されているケースもある。しかし、円安による影響があると回答した企業のうち、コスト上昇分を価格に転嫁できていないという企業が80.8%と8割超にのぼっている。円安の影響分を価格に転嫁できず、自社で負担する企業が圧倒的に多く、円安が進行するほど企業の足かせになっている状況がうかがい知れる。


企業がとるべき円安対策とは

将来の為替相場を予測することは、誰にとっても不可能だ。そのため、急激に為替変動が起きた際に、有効な対策をとることが難しい。では、企業がとるべき円安対策には、どのようなものがあるのだろうか?

一番はやはり、為替予約を利用した為替ヘッジなどで為替変動リスクを軽減する方法だろう。為替相場が急変してしまった今となっては手遅れかもしれないが、日ごろから自社のビジネスリスクを考え、為替リスクについても事前にリスクマネジメントをしておくのがもっとも有効な手段である。

では、対策が後手に回ってしまった場合にとるべき手段とは? その答えは業種や業界によりさまざまだが、ひとつには為替リスクの分散がある。例えば、大豆を輸入している企業であれば、ドル建て以外の輸入方法を模索する。米国産だけではなくブラジル産の大豆を混ぜるなどすれば、為替リスクを分散させることができるだろう。他にも、輸入原料を国内産に転換する、販売先を国内から海外に切り替える、コスト増を価格に転嫁する、などの方法が考えられる。

しかし、いずれの方法にしても、販路や生産方法を一朝一夕で変えるのは難しい。とくに資本力がない中小企業は、急激な環境変化に対応した迅速な策を採ることが難しく、そのタイムギャップが経営の命取りになる可能性は高い。

そのため、企業は自社のビジネスにとってリスクがどこにあるのか、どの程度の変化まで許容できるのか、というテーマを日頃からよく考えておくことが求められるだろう。

経営の命取りになりかねない為替や原油価格の変動から今後も目が離せない。

(ZUU online 編集部)

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