完全に競争環境から取り残された博報堂DY

ところで、2012年後ごろまで海外ビジネスでほとんど差のなかった電通と博報堂DYのビジネスは、今回の電通によるイージスの買収というインオーガニックグロース戦略の実現により、大差をつけられる格好になった。依然として博報堂DYの海外売り上げは、5%足らずである。

たしかに日経新聞のインタビューでは、経営層がM&Aを含めて選択肢を検討中であることを匂わせる記事が掲載されたことはある。しかし結果としては何も起こっておらず、海外展開については決定的な差がついたといわざるを得ない。特に日本の総合広告代理店の場合は売り上げの7割近くをメディアの売買によるコミッションで賄ってきているだけに、外資系広告会社のようなフィーベースによるビジネスは、手法もノウハウも門外漢である部分が多い。

その意味では、電通が外資でありながら珍しくケミストリーの合うビジネスモデルを展開してきたイージスを獲得したことは、きわめてレアなケースといってもよく、同じような展開のできる買収先は他に見当たらないのが実情だ。

現状ではもはやグローバルビジネスを視点とした電通との競争環境は成り立たなくなったのが、博報堂DYの状況だ。両社が大広、読広といった完全に国内ディフェンシブ系の2つの広告代理店チャネルまで維持して、今後何を軸にどう闘っていくのか、注目される。


国内広告ビジネスは東京五輪があっても茨の道

ところで国内の広告ビジネスは人口減少やレガシーメディアの衰退などもあり、現状では横ばいを続けているものの、マーケットキャップは確実に縮小へと向かっている。2020年に東京五輪開催が決まっても、国内広告市場に待ち構えているのは茨の道だ。高い給与体系で国内市場だけでやっていけるビジネスでは、もはや通用しなくなっている。イージス買収の成功でグローバルビジネス展開の礎をなんとか築くことができた電通でさえも、国内ビジネスに対する対応に変更を余儀なくされる時期に差しかかっている。

ドメスティックカンパニーからグローバルカンパニーへとリノベーションを続けていくことは同社にとっては必要不可欠なものであり、置き去りにされた残りの代理店もそれにどう追随するのか、それが今後数年の国内広告市場プレーヤーの課題となってきている。まさに正念場を迎えているのが、国内広告業界の実情なのだ。

(ZUU online 編集部)

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