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トヨタ自動車は1月、自社が保有する燃料電池車に関するすべての特許5,680件を無償で提供すると発表した。特許使用料を徴収せず、提携先に限らず広く一般に提供を行うことから、燃料電池車の普及が目的だと考えられる。


燃料電池自動車は水しかでない究極のエコカー

燃料電池自動車は、水素を燃料として発電し、走る車だ。地球温暖化の原因となる二酸化炭素や、大気汚染の主な原因である窒素は発生しない。すなわち水しか出さない究極のエコカーである。

ダイムラー、ゼネラルモーターズ、フォードといった会社も燃料電池車の開発を行ってきたが、市販されるというウワサすら聞かない。そんななか、トヨタ自動車は2014年12月に世界初の量産燃料電池自動車となる「MIRAI(ミライ)」を発売した。従来は1台1億円ともいわれていたが、MIRAIの販売価格は700万円台。コストダウンが急速に進み、市販レベルにまで到達したのである。また、15年度内にはホンダも販売を予定し、日産自動車も17年度には販売をめざすなど、燃料電池自動車市場は拡大しつつある。


無償提供を行ったトヨタ自動車の戦略とは

トヨタ自動車が無償で提供する特許は、期限付きと、期限のない無期限で無償提供の2種類がある。燃料電池車の開発や生産に関わるものは2020年までの期限付き、燃料となる水素を供給するための水素ステーションに関するものは無期限での無償提供となっている。

MIRAIの巡航距離は1回の補給で482kmと一般のガソリン車よりも短く、燃料補給のための水素ステーションもまた全国41ヵ所と十分とはいいがたい。水素ステーションを1ヵ所設置するのにかかる費用は数億円ともいわれ、技術革新によるコストダウンが求められている。

燃料電池自動車が普及するには、最低限燃料供給のための水素ステーションが普及する必要がある。この点、トヨタ自動車が開放した特許により進展することが期待される。