自動車部品大手のタカタ(東京)が製造したエアバッグの欠陥が米国で大きな問題になっている。

ここで問題になっているのは、いわゆる、製造物責任法(PL法)である。そもそも、PL法のPLとは、Product Liabilityのイニシャルをとったもので、「通常備えるべき安全性を欠く製品によって、その製品の使用者または第三者が生命・身体または財産に被害・損害を被った場合に、その製品の製造・販売に関与した者、特に製造者が負うべき特別の損害賠償責任」のことを指している。簡単に言えば、拡大損害の責任を取りなさい、という法律だ。

例えば、テレビを買ったのだが、そのテレビが内部から出火し燃えてしまった場合を考えてみる。実は、このことだけをもっては、PLの問題にはならない。PL法に抵触するのは、この出火が原因で、やけどをした、あるいは、家が燃えてしまったという二次的損害が発生した場合である。

そもそもPL法は、民法第709条の特別法で、全6条からなる短い法律である。民法709条は不法行為責任について次の通り規定している。

「故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責メニ任ス」

本規定の要件のうち、「故意・過失」という主観的要件が、PL法では、「製造物の欠陥」という客観的要件に変更されている(平成7年7月1日から施行)。

次に、PL法第3条で規定されている製造物責任の要件を整理する。被害者たる原告は、以下の4つの要件を充足することを「立証」しなければならない。

①製造業者等が製造した製造物である。

②製造物に欠陥がある。

③他人の生命、身体又は財産に拡大損害を生じさせた。

④欠陥と拡大損害との間に因果関係が存在する。

さて、この4つの要件の中で、特に②「製造物に欠陥があること」に関して、製造者の言い逃れが生ずる場合がある。例えば、「欠陥を知らなかった」云々。つまり「当該製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかった」というものがそれである。

しかし、製造者が知っていたことの原告側の立証に、特許明細書の内容、特に従来技術の説明を、証拠として使われてしまう場合があるのをご存知だろうか。更に、拒絶理由や異議・無効理由に対抗し、意見書・上申書などの提出に際し、特許性を強調したいがため、不用意に従来製品の欠点をあげつらうことも要注意である。

ここで、具体例を見てみよう。米国の場合だが、このような例が日本で起こり得る可能性は充分ある。