4月の消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年同月比+0.3%となった(コンセンサス+0.2%程度)。3月の同+2.2%から上昇幅が大きく縮小した。昨年4月の消費税率引き上げの押し上げ幅である1.7ポイントが剥落したことが主因だ。

消費税率引き上げの影響を除いても、3月の同+0.2%から4月の同+0.0%へ減速したことになる。原油価格の持ち直し、これまでの円安によるコストプッシュの価格転嫁の進展、そして内需が回復していることが、物価の押し上げに働いている。しかし、昨年半ばまでの原油価格の上昇の影響の反動があるため、原油価格が現状程度で推移すると、夏場までは前年同月比はほぼゼロ%で推移する可能性が高く、一時的にはマイナスとなるリスクもまだ残っている。

4月以降の賃金上昇の影響が強くなり、原油価格の下落の影響が剥落していく7-9月期以降は、前年同月比は持ち直すとみられる。しかし、年末までに+0.5%程度まで戻るのが精一杯であると考える。

物価上昇率が高くなく、賃金の上昇が強くなっていることは、実質賃金の上昇として、消費を拡大させていくと考えられる。賃金上昇による内需の拡大、そして更なる円安が、2016年年度末までに物価上昇率を+1.5%程度まで加速させると考える。

しかし、日銀の目標である安定的な2%の物価上昇の早期到達は困難であろう。5月の東京都区部消費者物価指数(除く生鮮食品)は+0.2%と(コンセンサス+0.2%程度)、4月の同+0.4%から上昇幅が縮小した。しかし、消費税率引き上げの影響(+0.3ppt)を除くと4月の+0.1%から5月の+0.2%まで上昇幅が若干拡大したことになる。季節調整済前月比でみると4・5月とも0.0%であり、新年度入り後の価格改定による物価の上昇圧力は日銀が想定しているより弱かったことが確認された。


4月失業率は低下、賃金上昇が物価上昇につながるか

4月の失業率は3月の3.4%からさらに低下し3.3%となった(コンセンサス3.4%程度)。3月は労働市場から退出した失業者が増加し、テクニカルに失業率が2月の3.5%から低下した。定年退職の増加や、賃金上昇により共働きではなくても生活をする余裕が出たのか、4月にも更に退出が続き、失業率が更に低下した。足元の失業率の低下幅は実体より大きく見えている。

しかし、企業の雇用不足感は、製造業と非製造業ともに強まっている。人手不足感を背景とした企業の採用活動も強くなってきていた。今後の企業の雇用者の増加は大きいと考える。就業者の増加は、これまで労働市場を退出していた労働者が戻る分を十分に吸収すると考える。2015年には失業率は自然失業率とみられる3.5%を明確に下回り、強い総賃金の拡大がデフレ完全脱却の実感につながっていくと考える。

しかし、賃金上昇が物価上昇につながり、それが賃金上昇を更に加速させる形にならなければ、日銀の目標である2%の安定的な物価上昇は困難だ。その時の失業率は3%を下回る水準であると考えるが、まだ時間がかかるだろう。


4月鉱工業生産は前月比プラス

4月の鉱工業生産指数は前月比+1.0%となった(コンセンサス+1.0%程度)。昨年4月の消費税率引き上げによる在庫調整が一巡し、旧正月による前倒し輸出に対応するためもあり、1月の生産指数は前月比+4.1%と大幅に上昇した。2・3月にはその反動での低下は予想されていた。

しかし、1-3月期の米・中の経済成長率は弱く、輸出数量の回復(10-12月期の前期比+3.8%に続き、1-3月期は同+1.0%)に加速感がなかったことが、その低下(2月同-3.1%と3月同-0.8%)を大きくしたと考えられる。4月の輸出数量は回復しているもののまだ力強さに欠け、生産指数の2ヶ月連続の低下からのリバウンドは限定的なものになった。

トレンドとしては、輸量数量が回復、在庫調整も一巡していき、生産は回復基調にあると考える。2015年の生産動向は、米国景気の回復により輸出数量がどれだけ力強く回復するかにかかってくる。そして内需も総賃金の拡大を背景に堅調であることを前提とすると、生産動向も増加基調が強くなってくる考える。

日銀は5月の金融政策決定会合で、景況判断を「緩やかな回復を続けている」とし、4月までの「緩やかな回復基調を続けている」から上方修正し、より回復の表現を明確化した。景気動向は、いずれ回復が強くなっていくと考えられるが、輸出と生産の動向をみれば日銀の上方修正は少し前のめりである。マーケットの早期の追加金融緩和期待を弱めたいのだろう。しかし、物価動向はデフレ完全脱却へは順調に向かっていることが確認できるが、日銀の目標である安定的な2%の物価上昇の早期到達は困難であることが秋には確認され、10月に追加金融緩和に踏み切ると予想する。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

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