一棟貸しでも家賃の減額はある

また、最高裁は平成17年にオーダーリース契約の賃料減額請求も認めた。オーダーリース契約とは、ホテルやフィットネスクラブのような一棟貸しの建物で、賃借人の仕様に基づき建築した建物だ。このような建物は汎用性が低いため、賃借人が退去してしまうと、後継テナントを見つけることが難しい。

オーナーとしては、なんとかテナントの賃料を維持して建物建築費の借入金を返済したいところだ。そのため、家賃を一定期間、減額できないようにする特約を締結する例も見受けられるが、実はこのような家賃の不減特約も無効とされるのだ。


借地借家法は借家人保護の立場にある

なぜこのようなことが起きるのだろう。これらは、借地借家法の32条1項の規定が関係している。この借地借家法32条1項というのは、家賃増減請求権を規定している。借地借家法は借家人や借地人を強く保護しており、条文の中では、「近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。」とされている。「契約の条件にかかわらず」というのがポイントだ。

しかも、この条文にはただし書きがあり、「ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。」とされている。

つまり、「家賃を増額しない」というテナントに有利な条文は有効なのだ。裏を返せば、家賃不言特約のようなテナントに不利な条文は無効となる。自動増額特約の場合も、土地が上昇し続けるバブル時のような基礎的事業が失われれば認められなくなるのだ。


定期借家契約なら話は別

一つだけ注意が必要なのは、これらが議論されるのはハウスメーカーの管理会社との契約が普通借家契約の場合だ。実は定期借家契約だと不減特約や賃料自動改定特約も有効となる。ただし、多くの場合は管理会社との契約形態は普通借家契約であるので、家賃減額請求は認められてしまう。実際、オーナーとしても管理会社に退去されてしまうと困るため、減額申し入れは聞かざるを得ないのが実情だ。


管理会社は賃借人と同じ

以上のように、管理会社は家賃減額請求が可能なため、管理会社の事業リスクは実は低い。一方で不動産オーナーは家賃減額を受けるため、事業リスクは非常に高くなる。管理会社はアパート事業の共同事業者ではなく、賃借人なのだ。これからアパート建築を計画する人は、家賃保証付きでも家賃減額があり得ることを認識しておいたほうがいいだろう。(ZUU online 編集部)

【関連記事】
ここなら値段が下がりにくい?中古マンション「人気の駅ランキング(首都圏)」
相続税対策としての不動産活用術とは?
土地活用に「コンビニ」の落とし穴
なぜ、上場企業の「不動産」売却が増えているのか?
「スポーツ関連」に熱視線、五輪に向け国家予算は過去最高!