日本の縦割り行政が規制緩和へ抵抗

そもそも、特区を設ける趣旨は「規制緩和」にある。それなら全国で規制を緩和すればよい、あえて特区を作る必要はないのではないかと思われるかもしれないが、話はそう簡単ではない。

日本の行政は「縦割り行政」といわれ、省庁ごとに権限がある。その権限が多ければ多いほど、予算(会社でいう利益)を獲得することができる仕組みでもある。省庁を横断しての規制緩和には抵抗も大きくなる。

一方、業界団体も新規参入が制限されることによって既得権が守られるため、規制緩和には反対の声を挙げる。そして、これらの業界から献金等をもらっている国会議員は、規制緩和に諸手をあげて賛成しづらくなるという構造だ。

こういったことから、全国の規制緩和となると大変な反発を受けることは必須。そのため、「特定の地域に限定して試しにやってみましょう」というのが特区だ。地域により環境は異なるのだから一律に規制するのではなく、臨機応変に対応すべきというのがその根拠となっている。

いわゆる、雇用、医療、農業といった「岩盤規制」について、国家戦略特区を活用して突破口を開き、民間の能力が十分に発揮できる環境を整備して、経済成長につなげたいという考えだ。

安倍首相は、日本経済や社会の停滞理由は「岩盤規制」にあるとして、打破することが経済活性化につながると強調している。しかし、金融政策による円安で輸出産業を中心とした経済の活性化は進んでいるものの、新しい産業や特区による規制緩和で経済が活性化してきているという話は未だ聞かない。


圧力団体の発言力、規制緩和は成功するのか?

政府は、「国家戦略特区」として、東京圏(東京9区・神奈川県・千葉県成田市)、関西圏(大阪府・京都府・兵庫県)、兵庫県養父市、新潟市、福岡市、沖縄県の計6か所を指定し、規制緩和を行うとしている。

たとえば、東京圏の場合、外国人の在留資格を見直し、国際ビジネスやイノベーションの拠点となることを目指す。関西圏は再生医療などの先端医療の研究開発拠点として位置づけられ、新潟市と養父市は、農地売買の認可権限の見直しや農地の集積、企業の参入を容易にする農業改革の拠点となることが目されている。

また、福岡市はベンチャー企業の雇用条件を整え、起業を促進する雇用改革拠点としての役割を期待されているのだ。

このように、経済成長を先導する役割が期待される一方、農業団体や医師会からはあいかわらず反発がある。農業の株式会社化や医学部設置によって既得権が害されると横槍が入っているのだ。

このような圧力団体が発言力を持っているうちは、たとえ特区で規制緩和が成功しても、全国へ拡大して規制緩和することは難しい。特区での限定された経済効果はたかが知れたもの。日本全体で緩和されなければ思うような経済成長は見込めない。

数を持っている現政権の政治力をもって、全国へ規制緩和が広がっていくことを期待したい。(ZUU online 編集部)

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