総合スーパー大手「イオン」の業績が芳しくない。2015年2月期の連結売上高が国内小売業では初となる7兆円を達成した反面で、営業利益や経常利益といった利益面では、2012年2月期以降、減少が続いている。2012年2月期の連結営業利益は1986億円だったが、2015年2月期では連結営業利益1413億円と3割も減少。利益の減少に歯止めが利いていない。

イオン銀行を筆頭にする総合金融事業や、「ツルハドラッグ」「ウエルシア」といったドラッグ・ファーマシー事業は非常に好調だが、本業の総合スーパー(GMS)事業の営業利益が前期と比べて366億円も減少してしまったため、落ち込みをカバーできなかった様子だ。

このままイオンは浮上出来ないのか。総合スーパー事業不振の理由を今回は探った。


規模拡大がメリットにならない時代に

営業赤字に陥った主な要因としてイオンが挙げているのは昨年4月の消費税率の引き上げや物価上昇による消費者の購買意欲の冷え込みだが、ほかにも理由がありそうだ。

イオンのこの不振を読み解くカギの一つは小売業のトレンド。同社は地方や郊外をメインターゲットとして店舗展開を進めてきた。ところが今では、都心回帰が起きており、都市部の方が業績が良いという企業が増えている。郊外地域をメインに事業を展開してきたイオンにとっては、厳しい事業環境になってきているようだ。

もう一つの理由になりそうなのが、ビジネスの規模。イオンがライバル企業を買収して成長を続けてきたことも、業績不振の理由になりそうだ。ライバル企業を買収すれば競争相手が減り、それだけ業績が良くなりそうだが、消費者の嗜好も多様化しつつある時代の小売業ではそうともいえななそうだからだ。

企業規模を拡大させるイオン側の利点は、これまで以上に大量仕入れが可能になり、仕入れコストが下がることだった。仕入れコストが下がった分を価格に反映させ、いつ来店しても安いものを提供できるというわけだ。

ところが、消費者は食品などの日常的な消費品を求めている。保存が利くものであればいいが、生鮮食品の場合は味が落ちる。鮮度重視の商品では無視できないが、大量仕入れでは、輸送時間がかかるためだ。ダイエーの業績悪化時も、野菜の鮮度が悪いといった声が多く聞かれていた。

そうした実情を反映してか、イオンではモールに入店している専門店を利用し、生鮮食品は地元のスーパーで買うという人も多いという。


時代にあった総合スーパーとは?

業績が好調なスーパーでは、各店舗に仕入れの権限を与え、地域の特色と鮮度を重視した仕入れを行っている。このため、多少コストは高くなっても、客足が落ちることはあまりない。

規模拡張を続けたイオンは、中央集権的に業務を行っている部分が大きい。各店舗に権限を与え、スーパーとしての基本である生鮮食品から事業を見直す方法を考えることも必要ではないだろうか。

規模の拡大がメリットであった時代から、消費者の多様な嗜好に合わせた小回りが利く企業が求められる時代に変わりつつある。イオンの規模が大きいだけに、早急な変革は難しいかもしれないが、毎期毎期利益が減少している現状では待ったなしであることも事実だ。

総合スーパーイオンが復活するには、まだまだ時間がかかりそうだ。(ZUU online 編集部)

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