ComplyorExplainの状況
開示を行った58社のうち、36社がすべての原則をComply(実施)するとし、残る22社が特定の原則についてComply(実施)しない理由をExplain(説明)している。それぞれの具体的な企業名は[図表1]のとおり。
22社がExplainした「実施しない原則」は延べ78件。そのうち48件は、「来年度実施」、「現在検討中」といった実施時期や検討状況の説明である(5)。提出時点ではExplain として記載されているが、今後、Complyが予定ないし期待されるものであり、実質的にはComplyの範疇に入る。
Comply予定の48件のうち、項目別で9件と最も多かった原則は、いわゆる「取締役会評価」(補充原則4-11(3))である。海外の上場企業では一般的な慣行となっている取締役会評価(6)は、日本では一部の先進的企業においても取締役の自己評価にとどまっている例が多く、開示も含めて今後実施あるいは検討するといったExplainに収斂している。
実施時期等ではなく、実施しない理由をExplainした30件のうち、主なものをコード原則別に見ると、
(1)招集通知・情報発信の英訳(補充原則1-2(4),3-1(2))7件
(2)独立社外取締役の有効な活用(原則4-8及び補充原則)7件
(3)任意の仕組みを活用した統治機構の更なる充実(原則4-10(1))3件
(4)政策保有株式(原則1-4)2件
(5)取締役会の役割・責務(補充原則4-1(2),4-2(1))2件
となっている。実施しない項目については、自社の個別事情に照らしてその理由を十分説明することが求められる(7)。その開示に際しても、ひな型的な記述や具体性を欠く記述を避け、利用者にとって付加価値の高い記載となることが必要である(8)。「株主等の理解が十分得られるように工夫」(9)することで、結果的に企業・株主等の双方にとって対話にかかるコストの抑制にも繋がる。
上記(1)招集通知・情報発信の英訳については、「現状10%未満の外国人株主保有割合が20%以上になれば検討」などとExplainされている。コードは、株主等の側にも、会社の個別の状況を十分に尊重することを求めており(10)、英訳を望む外国人株主であっても、(納得するかは別にして)説明の趣旨については理解を得られるだろう。
(2)の独立社外取締役の有効な活用に関しては、コードが要求する2名以上の選任を行わない理由が説明されている。また、コードが例示する、独立社外者のみの会合、筆頭独立社外取締役の決定について、それぞれ行わない理由が会社独自の考え方や判断に基づいて述べられている。(3)以下の項目についても同様である。