(写真=PIXTA)

90年代後半から2000年台初頭にかけて立て続けに起きた金融危機により、公的資金注入を受けることになった大手銀行のうち、りそなホールディングス <8308> とあおぞら銀行 <8304> が公的資金の返済を前倒し、完済を実現したことから、公的資金の資本注入で完済の目処が立たないのは新生銀行 <8303> だけとなった。

公的資金が入ったままでは、経営状況の詳細な説明を国から求められるなどの制約がかかり、経営戦略に関する自由度が低くなる。10年以上にわたる返済を前倒しで終えることに成功した2行は、支払いの負担による重しが取れることとなるため、戦略転換の実現が可能となるだろう。

両行はすでに新たな事業戦略を打ち出し始めており、公的資金返済をめぐって各行明暗が分かれ始めている。

りそなHDは960億円を完済し戦略投資を拡大

りそなHDは6月の株主総会後に公的資金の残債となっていた960億円を完済している。2003年に約2兆円の公的資金を受けて実質国有化されてから、ピーク時には3兆円あった公的資金を実に12年で完済し、同行では配当金以外の資金を投資機会に振り向けていくことができる。

すでに同行では新たな資本政策として第一生命 <8750> と日本生命に対し自己株式1億3,000万株を割り当てることも発表し、安定株主の確保に加え生保の商品を利用した保険の窓販事業の強化を進める。

また個人向けの金融商品をつくる資産運用会社を新たに設立し、今年度中に営業をスタートさせるという。海外業務に注力するメガバンクとは異なり、個人や中小企業向け業務をさらに強化していく考えで、リテール(小口金融)ナンバーワンの金融機関をめざす。