英国,EU離脱,HSBC,スタンダードチャータード
(写真=Thinkstock/Getty Images)

英国の銀行業界に異変が起きている。大手の銀行が軒並み本社を英国外へ移転することを検討しはじめているのだ。日本のメガバンクが海外に本社を移転するということを想像してみればことの大きささがうかがい知れるのではないだろうか。


HSBCは本社移転を数ヶ月以内に決定

英銀行最大手のHSBCは英国外に本社移転を真剣に検討しており、数ヶ月以内にガリバー現CEOが本社移転に関する決定を下すことを既にあきらかにしている。HSBCは全世界で5万人規模のリストラを断行することも発表しており、単なる本社移転にとどまらない大きな組織改変を視野に入れた動きを見せている。

スタンダードチャータード銀行も英国外への本社移転を検討中とのことで、アジアに拠点をシフトすることが正式に検討されている。アンディ・ハルフォード財務取締役は、銀行税が前年の3億7000万ドル(約440億円)から今年は5億4000万ドル(約650億円)へと大きく変化するため、株主がこの問題に着目し始めたと述べており、銀行税引き上げを嫌気した発言をしている。


英国のEU離脱を嫌気

英大手銀行が英国から出て行くことを考えているのにはいくつかの理由がある。

ひとつには、英国のEU離脱の可能性が出てきていることがあげられる。キャメロン首相の圧勝で2017年にEU離脱を問う住民投票が現実に行われることとなり、場合によってはさらに前倒しの実施も検討されている。

英国は欧州通貨統合後に金融センターとして一層の発展を見せたが、為替市場におけるポンド自体のシェアはユーロの3分の1程度であり、ユーロ取引あっての英国となりつつある。

バークレイズが2014年にまとめた英国民の意識レポートによると、英国民にはEUにネガティブなイメージを持つ人が多く、高齢者を中心にEU離脱を求める声が高まっている。こうした動きは欧州の一員であることに大きなベネフィットを感じている英国の銀行とはかなり意識が異なるものとなっている。


英国当局からの課税強化の動き

英国当局からの課税強化の動きも銀行の経営を圧迫する要因となっており、オズボーン財務相は今年3月に新年度予算を議会へ提出した際、公共財政の修復により大きな貢献をしてもらうとして、今年の銀行税徴収額を9億ポンド(約1600億円)拡大する意向を示した。

株主対策としても、こうした銀行税の税額アップをそのまま受け入れるわけにいかないとする銀行が増えており、水面下ではHSBCやスタンダードチャータード以外にも同様の動きを検討する銀行が存在すると見られている。


アジア圏でのビジネスに妙味

HSBCもスタンダードチャータードも、既に19世紀からアジアに拠点を置いて現実的な活動をしており、アジア圏に本社を移転しても違和感のないビジネスを継続できると考えている。

このことが本社をアジアに移転させる大きな動機となっているようだ。メディア報道によればHSBCは香港、スタンダードチャータードはシンガポールを拠点とすることを検討していると思われる。


英国は実利主義、伝統的に欧州大陸がまとまることを嫌う国民性

上述のバークレイズのレポートでも明確になっているが、英国がEUに求めるのは経済的メリットであり、EU統合の理念を完全には共有しているわけではない。そのことが、この期に及んで離脱の流れをくすぶらせている原因であるといえる。

また、一連のユーロ危機やギリシャ問題、その解決策としての統合強化等が英国には遠心力として働いている。 もともと英国民は、抽象的な理念よりも経験的知識を尊重する国民であり、そのため英国には成文憲法すらないのが実情だ。

歴史的にみても欧州大陸の強国登場は英国の脅威となってきており、フランスやドイツが長く仮想敵国とされてきた伝統も根強く残っている。EUの一員としてのメリットを享受したい英国の銀行が、英国のEU離脱の現実性に備えて国外へ出て行こうとするのも納得できる状況といえる。(ZUU online 編集部)

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